【生態】
也沙は帰る途中『あいつ家でおとなしくしてるかなぁ~』と鈴々の事を考えていた。
帰宅するとドアには鍵が掛かっていた。也沙は鞄から鍵を取り出しながら「ママは仕事かぁ~」とつぶやいた。
鍵を開けキッチンに行くと、テーブルに「冷蔵庫に肉じゃがとサラダが入ってます、お味噌汁も温めて食べてね」と書き置きがあった。
也沙は「とりあえず着替えるか」と部屋に入ると泣き声が聞こえてきた。也沙が泣き声のする方を見ると、泣いていたのは鈴々だった。
也沙が「何、どうしたの?」と聞くと、鈴々は「鈴々のこと信じるって約束したのに、何で鈴々のこと無視するのだ!」と怒っている。也沙は「無視なんかしてないわよ! ってか、あんたずっと家に居たんじゃないの?」と逆ギレして言った。
鈴々は「学校にも行ったのだ! 鈴々はずっと也沙と一緒なのだ!」と言った。也沙は「だって部屋に入るまで、あんたの姿なんて見えなかったし、声すら聞こえなかったもん!」と言った。鈴々が「本当に?」と言うと、也沙は「本当に本当!」と答えた。
鈴々が「也沙に無視されて……」と言うと、也沙は被せる様に「見えなかったんだって! 分かった?」と言った。鈴々が小さく「うん」とうなずくと、也沙は「とりあえず着替えるから出てて!」とドアを開けた。鈴々はしょんぼりしながら部屋を出た。
しばらくして也沙が「入って良いわよ」とドアを開けると、鈴々は廊下で淋しそうにしゃがんでいた。
鈴々がとぼとぼと部屋に入ると、也沙は「何時から泣いてたの?」と聞いた。鈴々は「学校行く途中も学校着いてからも、鈴々はずっと也沙に話し掛けたのだ、鈴々を無視して也沙は三枝と楽しそうにお喋りしたのだ、鈴々は悲しかったのだ……」と言って思い出したのか、また泣き出した。
也沙は「学校からずっと泣いてたの?」と驚いた。泣きながらうなずく鈴々を見て、也沙は鈴々が可哀想になり「ごめんね、でも本当に鈴々が見えなかったんだよ……」と言った。鈴々は「分かったのだ、わざとじゃないなら許すのだ」と言った。也沙は「何も悪いことしてないのに……」と鈴々に許すと言われ納得出来なかったが「ここは大人になって……」と自分に言い聞かせた。
也沙が「でも不思議よね、何でこの部屋でしか鈴々が見えないんだろ」と言うと、鈴々は「鈴々も知らないのだ」と言った。也沙が「とりあえず鈴々と話せるのは、この部屋だけみたいだから、も~ 泣かないでよ」と言うと、鈴々は「泣かないのだ、帰るまで我慢するのだ」と言った。
也沙が「そっか、じゃぁ~ ご飯食べてくるね」と言うと、鈴々が淋しそうに「も~ お話し終わり?」と言った。也沙が「食べて洗い物して置かないとママに悪いから、また後で話そ」と言うと、鈴々は「ママさん何時も忙しそうだものな…… また後でなのだ」と言った。
也沙は「ついでにお風呂も入ってくるから良い子にしてるんだよ」と言って部屋を出て行った。
也沙は味噌汁を火にかけ、冷蔵庫からサラダと肉じゃが、冷凍庫からご飯を取り出し、サラダをテーブルに置き、肉じゃがとご飯を順番に電子レンジに入れ温めた。テーブルに着き温めた肉じゃがを頬張りながら『そういえば鈴々ってご飯食べないのかな?』等と考えていた。
也沙は洗い物を済ませ、お風呂に入りながら『鈴々何してるかなぁ~』と考えていた。そして『何で部屋でしか見えないんだろ? さっきは廊下で淋しそうにしている鈴々が見えたよなぁ~』と同じ疑問にぶつかる。その時、ある疑問が頭をよぎる『学校にも着いて来たみたいだし、ずっと一緒って……』と鈴々の言葉を思い出した。
也沙は『もしかして見えないだけで側に居るの?』と考えた途端、顔がみるみる赤くなった。也沙は急いで風呂から上がり部屋へ戻ると背後から「やっと話せるのだ」と鈴々の嬉しそうな声が聞こえてきた。
也沙は「ずっと一緒に居たの?」と聞いた。鈴々が「ずっと一緒なのだ」と答えると、也沙は「お風呂入ってる時も?」と聞いた。鈴々が「あたりまえなのだ」と答えると、也沙の顔がまた赤くなった。
也沙は「何でお風呂まで着いてくるのよ!」と鈴々に怒った。鈴々は何故也沙が怒っているのか分からず「何で一緒じゃいけないのだ?」とキョトンとした表情で言った。
也沙が「恥ずかしいからに決まってるでしょ」と言うと、鈴々は「何が恥ずかしいのだ?鈴々は也沙を護るのが仕事なのだ、だから一緒にいて当然なのだ」と言った。
也沙は鈴々の言うことに納得はしたのだが「何時も一緒にいて護ってくれるのは嬉しんだけど、お風呂とトイレだけは着いて来ないで!」と言った。鈴々がまた「何でなのだ?」と聞くと、也沙は「だから恥ずかしいからに決まってるでしょ!」と言った。鈴々は「也沙が怒るなら分かったのだ」と納得いかない様子で言った。
也沙は「そうだ、鈴々はご飯どうしてるの?そもそも神様ってご飯食べるの?」と思い出した様に聞いた。すると鈴々は「也沙が食べると鈴々もお腹いっぱいなのだ、感謝して食べたら美味しいのだ」と答えた。
也沙が「感謝しながら食べると美味しくなるんだ……」と言うと、鈴々は「赤い三角のつぶつぶが付いたのと、箱に入った黒くて中に木の実が入った、口の中で溶けて甘~いやつが好きなのだ」とにやけた顔で言った。
也沙は『赤いのは多分苺よね…… 黒いのはチョコだと思うけど、木の実ってピーナッツ? アーモンド?』と思い鈴々に聞いた。「木の実って大きい? 小さい?」と也沙が聞くと鈴々は「大きいやつなのだ」と言った。
也沙は「じゃぁ~明日買ってあげるね」と言った。鈴々は「嬉しいのだ、早く明日になって欲しいのだ」と言った。