【予選】
予選当日、也沙が会場に着くとAとBブロックは既に終了し、Cブロックの予選が始まるところだった。也沙は控え室に通されモニターでCブロック予選を観戦していた。
会場に入った時から緊張していた也沙だったが、試合が進むに連れどんどん緊張感が増して行った。
試合は準決勝の出場者が決まり、少し休憩が入った。也沙が「ふぅ~ 緊張する」と言うと、鈴々が「鈴々がついてるから大丈夫なのだ」と言った。
也沙は『この中の誰かとやるのかぁ~』と思いながら、何気なくあたりを見渡すと、その中の1人に目線が止まった。也沙は『この人何処かで会ったことがある様な……』と思った。
鈴々が「也沙まだぁ~ 鈴々は暇なのだぁ~」と言いながら床をゴロゴロし始めた。也沙は「これが終わったら出番かぁ~ 今のうちにトイレ済ましとこ」と言って控え室から廊下に出ると、誰も居ない事を確認して「もうちょっとで出番だから我慢してて」と鈴々に言った。鈴々は「分かったのだ、我慢するのだ」と言った。
也沙がトイレから戻ると、既にCブロック予選が終わった後だった。すると控え室のドアをノックし係員が入って来て「これよりDブロック予選が始まりますので、皆さん会場へと移動して下さい」と言った。也沙が「いよいよね」と言って立ち上がると、鈴々も「よ~ し頑張るのだ」と気合いを入れた。
Dブロック予選も中盤まで差し掛かり、いよいよ準決勝で也沙の出番となった。
也沙はシードだった事もあり、司会者から「対戦回数315戦で無敗の女子高生、天願也沙さんです」と紹介され「今大会の意気込みをどうぞ」と聞かれた。也沙はしどろもどろになりながら「ほ、ほ、本戦まで行けたら、う、嬉しいです」と言った。
司会者が気を使い「緊張しているみたいですね、とりあえず深呼吸しましょう」と言った。司会者の「はい吸って〜 吐いて〜」と言うのに合わせて、也沙は深呼吸した。
司会者に「落ち着きましたか?」と聞かれ、也沙が「はぁ~ なんとか……」と答えると、司会者は「それでは準決勝スタートです」と言った。
大会では構成を期すためカードは機械でシャッフルされスタッフが特設のボードに並べ、参加者はコイントスをしてプレイヤーに用意されたテーブルにある丸にコインをはめるだけとなっていた。
也沙は緊張していたので、コイントスで剣が出たのか盾が出たのか、どんなカードが出たのかも覚えてなかったが、コイントスを3回しただけで勝負はついた。
鈴々が「也沙、也沙」と心配そうに呼んでいた。気がつくと司会者に「天願也沙さんが決勝進出に決まりました」と紹介されていた。也沙が「終わったんだ……」とつぶやくと、鈴々は「まだ終わってないのだ、次も頑張るのだ」と言った。
決勝進出となると更に也沙は緊張し、準決勝の記憶も無いままに決勝戦が始まった。司会者に何か聞かれた気もするが、何を聞かれて何と答えたかも覚えてなかった。
鈴々の「也沙何か変なのだ、しっかりするのだ!」と言う声が聞こえ我に返ると、プレイヤー用のテーブルの前に立っていた。そこで初めて対戦相手に目をやると、そこには控え室で見覚えのある様な気がした人の姿があった。
司会者が「天願也沙さん、大塚雄二さんによるDブロック決勝戦を行ないます、準備は宜しいでしょうか」と言った。大塚が「はい」と言うと、也沙も慌てて「はい、大丈夫です」と言った。
司会者の「コインの準備をして下さい、ではback or table」の掛け声で也沙と大塚の2人はコインを宙へと弾いた。也沙は緊張のあまりコインを落としそうになった。
司会者が「attack or defense」と言うと、スタッフがArmsのカードをめくり「Decisive battle」と言うとGodsのカードをめくった。
1ターン目が終わり也沙が優勢ではあったが、ほとんど差はなかった。4ターン目が終わっても大差はつかず、5ターン目の結果次第では、どちらが勝ってもおかしくない状態だった。
也沙が「鈴々お願い!」と言うと、暇で気が散っていた鈴々は「まかせるのだ!」と集中力を取り戻した。結果、5ターン目で也沙が勝利し本戦への出場を決めた。司会者が「Dブロックからの本戦出場は、天願さんに決定しました、10億円獲得のチャンスです!頑張って下さい」と言った。
それから也沙はスタッフに呼ばれ控え室とは別の部屋に通された。そこで本戦の日時等の説明を受けていると、外では救急車のサイレンが鳴り響いていた。
スタッフの人が「やけに救急車の音がうるさいな」と言うと、也沙は「近くで事故でもあったんですかね?」と言った。




