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【敵討】

 翌朝、也沙は「行ってきまぁ~ す」と玄関まで来たが忘れ物に気付き部屋に戻った。1階から「何?忘れ物?昨日のうちにちゃんと準備して置かないから!」と母の声がした。


 也沙は「これ持って行かなきゃ」とAlternativeを鞄に入れた。それを見て鈴々が「小田島なんかに負けないのだ、鈴々がついてるのだ」と言った。


 也沙は鈴々に「サンキュー行ってくるね」と言ってから『着いてくるのか……』と思った。鈴々も也沙につられたのか「行ってらっさぁ~ い」と笑顔で言った。


 也沙は再び「本当に行って来まぁ~ す」と言って玄関を飛び出した。


 也沙はなんとなく背後に視線を感じた。しかし腕時計に目をやると「少しやばいかな?」と言って走り出した。


 教室に入ると何時もなら1番に声を掛けてくるのは三枝なのだが、今日は小田島が「Alternative持って来たか?」と声を掛けて来た。也沙はAlternativeを取りに戻ったせいで走る羽目になり「ちゃんと持って来たわよ!」と不機嫌そうに言った。小田島は「じゃぁ~ 昼休みな」と言って席に戻って行った。


 直ぐに三枝が「也沙なら大丈夫!」と声を掛けて来た。也沙が「ありがと、頑張るね」と言うと、三枝は「あんなやつギャフンって言わせてやれ」と言った。也沙はまた視線を感じたが、その時チャイムが鳴り、直ぐに担任がホームルームを始めた。


 待ちきれなかったのか、昼休みになると直ぐに小田島が「Alternativeやろうぜ!」と也沙の席に来た。也沙が「まだ食べて無いんですけど!」と言うと、小田島が「そんなの食べながらで良いじゃん」と言った。也沙が「汚されたら嫌だから食べてからにして!」と言うと、小田島は「分かったよ、じゃぁ~食べ終わったらな」と言うと席に戻って行った。


 席に戻ってから小田島は、何度も也沙の方を見ている。それに気付いた三枝が「小田島ずっとこっち見てるよ」と言うと、也沙は「あんな見られてると何か食べづらいですけど……」と言った。


 三枝は「案外也沙に気があったりして」と言った。也沙が「キモ! 勘弁してよ! ゲームがしたいだけでしょ!」と言うと、三枝は「確かに! クラスの男子なんて、おこちゃまばっかだもんね」と言った。


 也沙と三枝はお弁当を食べ終え机の上を片付けると「小田島~」と声を掛けた。小田島が「食べるの遅いな~」と言うと、也沙が「手洗ってから来て」と言って、也沙も手を洗いに席を立った。小田島も「面倒くせ~ !」と言いながら教室を出て行った。


 也沙が教室へ戻ると既に小田島が三枝がいた席に座っていた。也沙が小田島の正面の席に座ると、三枝は近くの椅子を引きずって也沙と小田島の横の特等席に陣取った。


 也沙が鞄からAlternativeを出すと、小田島がボードを繋げた。小田島が也沙に「ん!」とカードを渡すと、也沙も小田島の前にカードを置いた。お互いカードを切り相手に渡すと、2つの山からカードを順番に5枚づつ並べた。


 也沙が「あたしAlternativeやるの初めてだから」と言うと、小田島は「へ~ 初めてなんだ」と舐めた表情で言った。小田島が「じゃぁ~ 俺がバックオア テーブルって言ったらコイントスな」と言うと、也沙は小田島の態度に苛つき「知ってる、説明書読んだ」とぶっきらぼうに言った。小田島は『何でこんな思いしてまで……』と思いながらも「せ~ のback or table」と言った。


 2人はコイントスをして、コインをボードの上に置いた。コインは小田島も也沙も女神が剣を持っていた。


 小田島が「次は俺がattack or defenseって言ったら……」と言うのに被せて也沙が「①のArmsを開けば良いんでしょ! どうぞ」と言った。小田島が「知ってんじゃん!じゃ、せ~ のattack or defense」と言うと同時にArmsのカードを開いた。也沙は★4つの剣、小田島は★3つの剣だった。


 小田島の「せ~ のDecisive battle」の掛け声で2人はGodsのカードを開いた。也沙は★4つの幻獣、小田島も★4つの幻獣だった。お互い属性の優劣も無かった為、少々だが也沙優勢でゲームは始まった。


 小田島が「まだ始まったばかりだし、次のターン見てろよ!」と言って2ターン目が始まった。だが2ターン目も也沙が優勢。5ターン終了すると結果は也沙の圧勝だった。


 小田島は「先に3勝すれば良いんだよな、次勝ちゃ良いんだろ!」と言って也沙のカードを切り出した。それからの2戦も小田島は良いとこ無しで終わった。


 小田島が悔しそうに「もう1セットやろうぜ」と言うと同時に、也沙の背後から声が聞こえた。それは也沙の聞き覚えのある声だった。


 振り返るとそこには鈴々の姿があった。鈴々は「やったのだ、ざまぁ~ みろなのだ」とはしゃいでいた。也沙は「何であんたがここに!」と声を上げてしまった。後ろで見ていた男子がビクっとして固まっている。


 三枝が「どうした?」と心配そうに言うと、也沙は「何でもない、気のせい」と言った。小田島が「どうするんだよ、勝ち逃げしないよな」と言うと、也沙は「やってやるわよ!」と言った。


 小田島との2セット目が始まったが常に也沙が優勢のまま、3戦で勝負がつき也沙の勝利だった。也沙はその間、背後から聞こえる声が気になって仕方が無かった。


 三枝が小田島に「ダサ! 1回も勝てないでやんの」と言うと、小田島は「天願、もう1セット」と熱くなって言った。也沙が「まだやるの?」と言うと、小田島は「はい次!」と也沙のカードを切り始めた。也沙は「しょうがないなぁ~」と言って小田島のカードを切った。


 3セット目も也沙が優勢になるにつれ、鈴々も調子に乗り「ボコボコなのだぁ~」等と言いながら、也沙の隣りでガッツポーズをしたりパンチを出したりと目障りになってきた。


 4セット目に入ると鈴々はついに也沙の回りをチョロチョロと踊り出した。鈴々が調子に乗るにつれ也沙のカードの引きも強くなり、守護神や聖杯のカードを引く回数も増えて行った。


 4セット目も也沙の圧勝で終わり、小田島が「もう1セットだけ」と拝む様にして言った。そのとき鈴々は小田島の前で寝転び、鼻をほじって鼻くそを飛ばすポーズをしていた。それを見て也沙の勘忍袋の尾が切れ「あ~ もう!」と言って机を叩いた。小田島はビビりながら「これで最後にするから頼むよ」と言った。


 也沙は「やるのは構わないけど、その前にトイレ」と言って席を立つと教室を出て行った。それを見ていた男子が「天願怖! しかし1セットどころか1戦も勝てないとは、小田島もなさけね~ な」と言うと、小田島は「お前も天願とやってみろよ、マジ強いから…… でも確率からしても次は絶対負けね~」と言った。


 そのころ也沙は怒りながらトイレに向かった。也沙が廊下で振り返ると、そこに鈴々の姿は無かった。也沙は「あいつ、何時も一緒なのだ~ とか言っといて何処行ったのよ!」と更に沸点を高くして来た廊下を戻った。


 教室のドアを開け一歩入ると也沙の肩の辺りに鈴々が浮いていた。也沙は気配を感じ横を向くと、鈴々を見て「うわっ!」と声を上げた。それから直ぐに「何処行ってたのよ!」と也沙が聞くと、鈴々は「お家じゃないのに鈴々が見えるの?」と言った。也沙は「さっきから何だか知らないけど…… 皆んなには見えて無いみたいだけど、とにかく静かにしてて!」と言った。


 也沙が席に戻ると三枝が「何驚いてたの? ってか誰かと話してた?」と聞いた。也沙が「ううん、何でもない独り言」と言うと、三枝は「大丈夫?」と心配そうに也沙を見た。そこへ小田島が「いいから早くやろうぜ!」と言った。


 5セット目を始めて直ぐに「お家以外でも也沙と話せて鈴々は嬉しいのだ」と何時もより小さな声で鈴々が言った。也沙は心の中で『そうゆう静かじゃなくて!』と突っ込んだ。鈴々がご機嫌で鼻歌を歌っている間に5セット目もほぼ瞬殺で也沙が勝った。


 小田島は悔しまぎれに「お前いかさましてんじゃね~ の!」と言った。也沙は「はぁ~ ? あんたがカード切ったんでしょ? そんなに言うならあたしのカード調べなさいよ!」と吐き捨てる様に言った。小田島がカードを調べても、各属性毎に★1つ~ ★5つのカードが2枚づつで問題が無い。


 也沙が「どうなのよ」と聞くと、小田島は「何も変なとこ無いけど……」と言った。也沙が「けど何なのよ!普通そこは疑って申し訳ありませんじゃないの?」と言うと、小田島は「でもずるいよな、自分の守護神と聖杯持ってるなんて」と言った。


 也沙が「そんなの持ってたって引けなきゃ意味無いでしょ!」と言うと、小田島は「だって大人が箱ごと買ってもなかなか出ないカードなんだぜ」と言った。也沙が「そんなの知らないわよ!」と言うと、小田島は負け惜しみで「初めてとか言って、どんだけ金使ってんだよ」と言った。也沙が「別売のカードなんて1袋しか買ってないし」と言うと、小田島は「引き良すぎだろ」と言った。


 也沙は「そんな事より、あんた負けたんだから三枝とあたしのジュース買って来なさいよ、残りは三枝の負け分とチャラで」と言った。三枝がすかさず「あたしフルーツ牛乳」と言うと、小田島は「分かったよ、天願は?」と言った。也沙は「じゃぁ~ いちご牛乳で」と言った。


 三枝が「也沙ぁ~ありがと~、敵取ってもらった上にジュースまでチャラにしてくれて」と言って也沙に抱きついた。也沙は「ジュースぐらいで大げさな」と言った。三枝は「持つべきものは友達だね、小田島のあんな顔が見れてスッキリしたよ」と言った。


 何時もは無糖の紅茶しか飲まない也沙が珍しくいちご牛乳なんて頼んだので「それにしても、いちご牛乳なんて珍しいね」と三枝が言うと、也沙は「ご褒美にね」と言った。三枝が「何のご褒美?」と首を傾げながら言うと、也沙は「ないしょ」と言って笑った。三枝が「何のご褒美よ~ 教えなさいよ~」と言うと、也沙が「教えな~ い」と言ってじゃれている後ろで鈴々が「何のご褒美なのだ? 知りたいのだ」と言っていた。


 そこへ小田島がジュースを買って戻って来ると「はいよ! フルーツといちご」と言って2人の前に置いた。小田島が「しかし1戦も勝てないとはなぁ~天願の強さは神がかってるよ」と言うと、也沙は「あたしには守護神様がついててくれるからね、感謝感謝」と言っていちご牛乳のパックにストローをさして1口のんだ。すると背後から「赤い三角みたいな味なのだ! 甘くて美味しいのだ~」と声がした。


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