錻(超短編)
窓から見える景色はいつも同じ様なものだ。
天気以外の変化なんて、樹から葉が生え、色が付き、小さな白い花が咲き、そして散る。
といったものぐらいだ。
それでも、この窓しか外の景色を見せてくれない。
外側の世界からすれば最早僕は窓の一部みたいなものなのだろう。
そう思うと滑稽な気持ちになる。
僕の居る室内は一定な温度で保たれていて快適だ。
僕の隣にはスイッチが横たわっている。
押したらすぐに白い服の人が来てくれる物らしい。
らしいというのはまだ使った事が無いから。
時々、部屋の奥、扉の向こうから話し声が聞こえてくる。
楽しそうだったり、真剣な声だったり。
話が出来ている事が正直、羨ましい。
僕は喋れない。
声が出ない。
設計ミスじゃないのかと神様を恨んだ時もある。
人に個性があるように僕のも個性なのだと受け入れられるようになったのは最近だ。
一人では何も出来ない。
それも仕方ない。
なぜなら僕は、ブリキのロボットなのだから。