境界線や領域
ゆるりと動く椅子に座り、
老紳士は今日も窓の外を見る。
片手に最中のアイスを持ちながら。
私はミスターベッケラー。アイスクリームが好きな老いぼれである。
こんにちは。
今日は境界線というモノを主において話をしようと思うのだが、
どうだろう。
はっはっは!
もちろん私の過去にも関係するよ。
まあ其れはおいおい話していくとしよう。
さて、それでは始めようか。
先ず、どんな世界にもどんなモノにも境界線というものは存在する。
そしてその【境界線】というのは、
物事や領域を分かつ境いの目の事である。
分野や使い方によっては、
これ以外にも様々な意味や例があるが、
其れらは今回の話には関連しないので置いておくとしよう。
境界線と一言に言っても、
様々なモノがあるだろう。
国と国と領域を分かつ線。
生物の進化を分かつ線。
そして、超えては行けない、
超えられない種族の間を分ける線の事を表す。
どちらかというと生物進化の線に近く、
縄張りとしての領域に近いのかもしれない。
私の居る世界を含め、
膨大で幾億もあるこの世界の中で、
伝承も含めて認知されている種族は、
神
人間
獣
妖精
天使
悪魔
等々、
これら以外にも
様々な種族が存在している世界が在るが、
どの種族にも領域は存在し、
境界線も存在する。
そしてその種族の境界線は、
全種族が本能的に暗黙の内に守っている物で、
通常はその種族の領域というモノに入る事が無いように分断されている。
だが、到達する事のできなかったモノに、
手を伸ばそうとしている世界もある。
例え世界の技術によって、
科学によって……其れが可能になったとしても、
その者本来の気持ちは変わらないで居て欲しい物だ。
かく言う私も種族というモノの線引きによって、
色々と大きな体験をしたものだ……。
私は昔から他の種族に興味があってね。
様々な世界に旅に出かけては沢山の場所を巡ったりしていたのさ。
まあ其れを知った同じ種族の者にはよく寒い扱いを受けていたが。
昔はよく熱かったり寒かったり窮屈な場所に閉じ込められたりしたねえ。
ん?
暗い顔なんてしなくていいのさ。
私にとっては其れすらも大事な事柄だったのだから。
おっと……!
いつの間にか君には重い話になってしまっていたかね。
其れならば、
ココからはほんの少しだけ、
いつもながらに唐突な昔話をしていこうと思う。
よろしいかな?
はっはっは!ありがとう。
先ず私は、
大勢の兄弟の中で一番最初に生を受けたが、
その事実を隠され、表に出された時には末の子として、
生活をすることになった。
末の子というのは私の種族の中では最も位の低いものだったらしく、
そのお陰といっては有れだが、
執拗で多種多様な嫌がらせを受けたりもした。
其れに耐えながらも、反抗し続けた私は、
いつの間にか青年といわれる程の年月を過ぎても、
兄弟達からの対応は何も変わらなかった。
そんなある日、
兄弟の嫌味を買ったらしく、
気が付いたときには、
狭い狭い暗闇の中へと押し込められていた。
そんな時、私はあの子に出会った。
狭い狭い暗闇から私を出してくれたのは、
あの子だった。
なにかなそのにやついている目は……。
ゴホン。
なんだか……恥ずかしくなってきてしまったので、
そろそろ紅茶の時間にするとしよう。
次の話も楽しみにしてくれるとありがたい。
それではまた逢える日を楽しみにしているよ。
ミスターベッケラーより。