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北の国の赤い蜘蛛62
夜が明け
梅岩は和室の隅に座って欠伸をかいた。
厳重な結界の中心に敷かれた布団には、小さな少年が寝かせられていた。
少年救出作業は、てんやわんやの騒ぎだった。
魔除けの煙草の臭いにやられ、百重が瀕死になった。
量産された烏傘の幻体のあまりの変体ぶりに、気分を悪くするものが続出した。忠実に烏傘が大量生産されただけでも充分に悪夢なのに、烏傘の奇形の群れなどはトラウマものだ。あの百鬼夜行じみた光景を夢に見ないか、梅岩も心配でならない。
一番大変だったのは、最大の功労者である木霊硯治郎だった。術式に集中して人化が解けるのは仕方がなかったが、体が狸に戻り顔だけが人化したまま残ってしまったのだ。禍々しさ爆発の人面狸は、助太刀に来た退治屋に危うく滅せられるところだった。




