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北の国の赤い蜘蛛57

「当主様、申し訳ありませんが…これはなんですか?」


儀式場に木霊秘書が顔を出した。

事務手続きを任せられたこの男は、仕事が全くわからず客一人に早々とギブアップした。梅岩に指示を仰ごうとして、梅岩が頭を悩ませているものを目にする事となった。


「何だいこれ?酷い臭いじゃないか。鼻がもげそうだ……」

当主のもとに手続きに来て新人秘書をあてがわれた老婆は、嗅覚で邪気を感じるという変わり者だった。退魔の術式を修める才能に欠片も恵まれていないことから、魔除けの効果を持つ煙草の売買を生業としている。


「ケンジ君、面白いところに来てくれたな。知恵を貸してくれ。

今から、この甕の中身の邪気を祓いたい。それには祓い屋や拝み屋を、都合三十人ほど必要とする。しかもこの甕の耐久力を考慮すると、今日中でないといけないだろう。さて、君ならどうする?」

梅岩は苦笑しながら秘書に話を振った。


烏傘は気付いた。この問題、解決は到底不可能であることを。

今日中に全国に散らばった霊能者の約半数を揃えるような奇跡など、どう遣り繰りしようが無理なのだ。

彼らもそれぞれ仕事を抱えている。段取りを組むには早くても一週間はかかるだろう。


予測では、三日以内に十人も集めればお釣りが来るはずだった。しかし甕から溢れ出る瘴気は予想を遥かに超えていたのだ。

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