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北の国の赤い蜘蛛54
梅岩が覚醒したとき、そこは元通りの雪原だった。
曇っていたは更に暗く、雪が降り始めていた。
縛妖陣は完成していた。
一度は陣の外へ出た白蛇の長麿が少年の体を縛り、動けなくしていたのだ。
黄金の光が円を描き、中心にいる少年と長麿は微動だにしていない。
「勝ったようですね、梅岩。
さて、ここからどうやるんですか?」
百重が指示を仰いだ。どんなに戦闘に優れていても、邪鬼であるこの男は破邪封印の術に関しては完全な素人だ。
(…勝った?)
梅岩は違和感を拭えなかった。今日の精神戦、どう考えても梅岩の敗北だった。少年の心の闇は梅岩にはどうしようもできないほど深かった。可能な限りの言葉をぶつけたが、たった一言の呪詛によって闇に落とされたのだ。
(…勝ったんじゃない)
もし少年に殺意があったなら、梅岩の精神は闇に落とされたままだった。
縛妖陣を仕掛けて負けた経験が無かったので、負けたらどうなるのか具体的には知らない。精神を犯され廃人になるのか、植物人間にされるのか、無傷のまま魂と生命を失うのか……もしくは、単に術がかからないだけで無事に戻って来れるのかもしれないが。




