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北の国の赤い蜘蛛52

少年を救ってくれそうな強い人が、ようやく現れた。


殺してくれと哀願したが、彼らはそうしてくれなかった。

既に精神が破壊されていて、まともに喋ることさえできなかった。その上、体は勝手に戦いを仕掛けるのだから意志の疎通もままならなかった。

寒い所に飛ばされて、寒さに凍えながらも勝手に人の命を貪り続ける体を制する術すらわからないまま、体は狩りに没頭した。


でも

この地獄を終わらせてくれる人達が、やっと現れたのだった。



梅岩の瞼の裏に、小さな痩せっぽちの少年の姿が映った。

少年には顔がなかった。まっさらな顔の下に、申し訳程度の小さな口が開いていた。

精神をすり減らしたスドウ少年は、自らの顔すら覚えていなかったのだ。


「俺を殺してくれよ…」

少年は梅岩に懇願した。


「駄目だ」

梅岩は断った。生きている人間を滅する気は、ハナからなかった。

「生きるんだ。もし君がたくさんの人々を殺したことを本当に悪いとおもうなら、生きて償うべきだ」

梅岩にはわかっていた。自分が酷く残酷なことを言っていることを。


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