北の国の赤い蜘蛛51
そこから後は地獄絵図だった。
少年は助けを求め、寺の境内中を歩き回って人を探した。
そして人を見かける度、腹の蜘蛛に似た足が薙払ってしまった。
そして、寺から生きている人は誰も居なくなってしまった。
少年は待った。
少年を救ってくれる人を待った。
待ちながら、どうしてこうなったのか考えた。
少年は、やはり大猿に喰われたのだ。そして、肉体を殆ど喰われたのだ。しかし、生来の霊力の強さが少年を死なせてくれなかった。近くにいた矮小な邪鬼たちを呼び寄せた。
そこで彼らはおもわぬ選択をした。
普通ならば、少年の残された肉体は食い尽くされただろう。しかし、邪鬼たちはそうしなかった。残された肉体に寄生し生かし、少年から流れる霊力を餌にし続けることを選んだのだ。
少年の力はそれ程強く、また美味であったのだ。
やがて少年の元に数人が訪れた。
少年は助けを請うたが、その人たちもあっと言う間に動かなくなってしまった。
もう涙も枯れた少年は、その人たちが人外のものであることに気付いた。
少年はなんとなくだがわかった。
もうこの世の中に、少年の命を救いうるものはいないことを。
体はもう自分のものではなく、少年の意志とは無関係に殺してしまう。
可能性が僅かにでもあるとすれば、それは少年の人生を終わらせるものであることを知ってしまった。




