北の国の赤い蜘蛛49
少年には何を言われているのかさっぱりわからなかった。
どうして邪鬼と間違えられるのだろう?心当たるものを探すところから始めなければならなかった。
記憶を辿り、少年が邪鬼と誤認されそうな可能性を探ると…
心当たりと言えそうなものが見つかった。
あの白昼夢が夢でなかった可能性に行き着いた。
ただし、そうだと考えても辻褄が合わなかった。
あれが夢でなかったとしたら、今こうして生きている理由が説明できない。少年の体は明らかに生存不能なほど食い尽くされていたのだから……
「シラを切るのもいいだろう。どこまで無様に人の振りができるか、見ものだがな」
住職はせせら笑いながら両手で印を結んだ。
「妖怪変化め、正体を現せ!
破ァァ!!」
住職の指先から、白い光弾が飛んだように見えた。
その刹那、少年は腹部に打たれたような衝撃を感じて、激しい吐き気に見舞われた。
「えうっ!」
少年の喉をぬめりつくようなものが走り通った。
吐き出したのは吐瀉物ではなかった。
百足のような無数の足が蠢く、体の長い緋色の蟲だった。少年は蟲を吐き出しきることが出来ず、口から蟲がはみ出たまま立ち竦んだ。
周りの小僧たちが絶叫した。
誰もが仰天していたが、一番ショックだったのは自分の口からグロテスクな生物を吐き出した少年自身だった。




