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北の国の赤い蜘蛛47
少年が僧侶に連れられ寺に帰ると、大騒ぎが起きていた。
聞くと、結界に人外のものが入ったらしい。
今し方人外のものに殺される夢を見たばかりの少年は震え上がった。もしもあの大猿みたいなものが襲ってきたら、大の大人が何人かかってもかなわないだろう。
寺の住職たちが大声で話し合っているのが聞こえた。
「口惜しい!なぜ、結界の弱点が割れたのだ!?
いかなる凶悪なものも、通れぬはずの、たった一つの抜け道をどう知った?」
「結界の秘密はカンパニーにも内密にしておりました。ただ、あそこなら術に詳しい者もいます。強い結界となれば、種類も限られます。
内通している者がいたとしたら、助言くらいはするかもしれません」
少年には何だか大変なことが起きているようだ、としか理解のしようがなかった。
一体どんな恐ろしい怪物がいるのか見当もつかなかった。だが住職みずから境内をうろつき回って探すのだから、相当に危険なものが徘徊しているものと見て間違いないだろう。
兎にも角にも早く見つけ出して欲しいと、少年はただそれだけを願った。




