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北の国の紅い蜘蛛40

長麿が少年の背後を取った。

もとは少年の一部だったもの。警戒されていない。

長麿の長い体が少年に巻きついた。不意を突かれた少年は仰向けに倒れ雪にめり込んだ。


百重は機を逃さず少年に馬乗りになった。まず一番のネックだった右腕を足の裏で抑え、巻きついた長麿を避けて拳で滅多撃ちにした。


その隙に梅岩は符を巻いた石を投げて、少年を囲む三方に配した。

梅岩が祝詞をあげ始め、ほどなく三方を囲んだ陣は円形に光りだした。

機を察した百重が長麿を無造作に掴んで、諸共に陣の中から飛び退いた。


「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ…」

少年は相変わらず呟いていた。

「殺せ殺せ殺せ殺せ…」

少年の呟きの中に、梅岩はふと気付いた。物騒なことを狂ったように口走る割には、殺意が薄い。


「殺せ殺せ殺せ俺を殺せ…」

少年の隠された本音を聞いた梅岩は、僅かに集中を乱して心の中で叫んでしまった。


(そんなことを言うな!)


この気の淀みは偶然か必然か、良い方向に転んだ。

予想したより早く、梅岩は少年の意識に引っ張られるように心の中に潜り込んだ。


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