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北の国の紅い蜘蛛37

勝負がわからなくなった、それだけではなかった。

梅岩は目を見張った。蜘蛛の左腕が、いつの間にか消えてなくなっていることに。

闘いの中で失われたものであるはずがない。拳で殴られて腕がもげるわけがない。だとすれば答えは一つ、左腕も右と同様に何らかのカラクリがあり、何らかの意図があって外れていることになる…


(退魔師よ……)

梅岩は誰かの声を聞いた。

厳密に言うと、『聞いた』のとは違った。音は耳から入ってきたのではなく、頭蓋に直接響いて入り込むように聞こえてきたのだった。

辺りを見回した梅岩は、声の主を発見した。

それは、蛇だった。

子供の腕ほども太い大きな白い蛇が、雪にカムフラージュされながら梅岩のそばで蜷局を巻いていた。

それは、当然のこと蜘蛛の左腕がなくなっているのと関係があるはずだ。


(優しき退魔師よ。聞いてくれ)

蛇の声に敵意は感じられなかった。警戒しつつも、梅岩は首を縦に振った。

(儂は紀伊の長麿(ながまろ)。あの子供の片腕を演じていたものだ)

梅岩にはわかった。この蛇は、ただの邪鬼の類とは一線を画する、世が世なら“神”や“ヌシ”などと呼ばれるだろう格調高いものであることが。

(ぬしに頼みがある。あの子を殺さず、救ってやることはできぬものか?)

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