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北の国の紅い蜘蛛35

刃を受けながら間合いを詰めた百重は、両手を使って二発の拳を打った。命中したものの、あまり効いているように見えない。

小柄な百重の振る拳が軽いのか、蜘蛛の体が硬いのか、どちらなのかはわからない。

蜘蛛の刃も通らないが、百重の拳も通らない。互いに通らない刃と拳の限りない応酬。互いに体は小さく、どちらが先に力尽きるかは梅岩には見当もつかなかった。


均衡はやがて崩れた。

蜘蛛が「ギィッ」と短い悲鳴を上げ、百重の拳は蜘蛛の腹に深々と突き刺さっていた。

蜘蛛は苦痛に耐えかねたのか、翼を開いて飛び上がり後退した。

梅岩は気付いた。蜘蛛から発せられる慞気が、明らかに弱まっていることを。それに反するように百重は疲労で弱まるどころか、緑色の光りはむしろ強く輝いていることを。

百重の拳はただの打撃ではなかったのだ。力を吸う拳なのだ。拳を当てれば当てる程、拳に敷き詰められた眼は打った相手の力を吸い続けていたのだ。

膠着は百重の望むところだった。撃ち合いが続けば、先に雪に顔を埋めることになるのは、蜘蛛の方であることは決まりきっていたのだ。

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