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北の国の紅い蜘蛛29

厳密にいうと、百重は一歩も動かなかった。しかし銃を抜いたはずの男も動かなくなった。

変化を察した梅岩が斜め後ろにいた百重の方を振り向こうとしたら、百重の手が頬を押し止めた。

「だめだ」

と言った百重の顔を、目の端で捉えた。額が縦に割れ、眼が開いていた。


銃を持った男はガクガクと震えながら、止めた手をゆっくりと動かし始めた。銃口の先は梅岩を外れ、男自身のコメカミへと移っていく。

(これが百眼に伝わる瞳術か…)

梅岩も目の当たりにするのは初めてだった。

眼力を使い対象を操り人形にできるのだ。頼もしくもあり、恐ろしくもある。

とあれ、感心ばかりしているわけにはいかない。


「だめだ」

今度は梅岩が止めた。幸いなことに、口先だけで銃の動きは止めてくれた。


「この国の退魔師は弱い。オレ一人で充分だ」

百重は上擦った声で、口だけ歪めて笑った。


「今のは訳すな」

梅岩は早口で通訳に命じた。


「…納得いただけましたかな?」

梅岩は掌で指して通訳を促した。

マルコヴィッチが冷や汗を一筋垂らした後、二度も頷いた。

百重の言葉は訳させなくても、通じていたようだ。

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