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北の国の紅い蜘蛛19

やはりマルコヴィッチは先に来ていて、カンパニーに突き出したのは烏傘だった。

この独断を責めるつもりは梅岩にはなかった。むしろこの最新情報を既に手にしていた老人に感心した。青麗に何を依頼されたか一言も言っていないのに、苦言を呈している。

更にもう一つ、偉そうなことを言う烏傘の方こそ西との繋がりがなければ知り得ない情報を手にしていることもわかった。



「そう。だからこそ貴重な人材を貸してでも、オレに振りたいネタがあった。一方的な依存でも監視でもない。ギブ&テイクさ」


そう言って、梅岩は自室へと歩き始めた。

梅岩は忙しい。カンパニーの助っ人が到着したら品定めして、明日にでも北へ飛び立たなければならない。今のうちに旅支度をしなければいけない。


烏傘は食らいつこうと腰を上げようとしたが、老いた体は思うようにならない。

「梅岩様は、爺やがお嫌いなのですか…?」


梅岩は一瞬だけ足を止めた。

これが足止めの策であることは重々承知しながらも、足を止めてしまった。


「そんなわけない。ブレーキがなければ、オレみたいなのは暴走しっ放しになる。感謝してるよ」

梅岩は本音を晒して、それで去った。


「そのブレーキが効いていないから、爺やは嘆いているのです…」

烏傘は木床の上で女々しく呟いた。

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