北の国の紅い蜘蛛15
それにしてもこの依頼、重要な落とし穴があった。
「青麗様、貴女ほどの人が高弟を連れて追い払うしかなかった邪鬼を、このオレがどうにかできるとでも?」
最大の懸念はそこにあった。この依頼、梅岩には明らかに荷が重すぎる。
「だって~、ねえ梅岩。妾たち攻めるのは得意だけど、守るのはからきしなの。あなたたちとは逆なの。可愛い下僕がもっと死んじゃったら、かよわい妾は泣いちゃうもの」
泣く子も黙る西の女王が嘯いた。冷酷極まりないと悪名高い女狐に、生娘に化けられて甘ったるい声をかけられる。こんなにゾッとするシチュエーションもない。
「守るのが得意なあなたたちなら、あの子に憑いてる怖いのもパパーっと祓えちゃうとおもうの。
もしかして、無理なの?東はそんなに人がいないの?」
青麗もただの色惚け老婆ではない。甘ったれる振りをして、しっかり探りを入れてきた。敵に人材を貸してくれなどと頼ってしまったのだから、これ以上の弱みを晒すのは危険だ。
「そんなことはありませんがね。ただ、貴女たちが始末できない程の邪鬼を退治するには、事前知識が足りないんですよ」
梅岩も鉄面皮を保ちながら答えた。




