北の国の紅い蜘蛛13
息子は数年は山寺で無事に過ごしたようだ。ところが、不意に事件が起こる。件の山寺と全く連絡が途切れてしまったのだ。
不審に思った青麗はカンパニーの部下を何人か送ったが、彼らは帰らなかった。嫌な予感がした彼女は、これなら間違いないだろうという手練れを遣わしたが、それも行方をくらました。
ついに青麗自らが選りすぐりの者を選んで様子を見に行ったところ…とんでもないものを眼にすることになった。
寺は坊主たちの血に染められていた。送った部下たちも同様に、寺を汚す肉塊と化していた。
もといた人数すらわからない状態の血と肉を埋葬する最中に、犯人は襲ってきた。青麗は交渉を試みたがそれは
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ…」
と連呼しながら飛びかかってくる始末。話し合い以前の問題で、人語を解せるものですらなかった。
それがあの「スドウ」の息子であることに、青麗は長く気付かなかった。かつては確かに人間だったそれは、微かに子供のにおいを残した全くの別物と化していた。
茶色の毛の生えた脚は狼のように走る。背中の黒い翼により雉のように空を舞い、長い滞空を可能にする。腹に生えた8本の蟲の足は10歩以内の全てを薙ぎ斬る。




