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咆哮

◇◆◇◆◇冒険者の町ウエルズ◇◆◇◆◇



 日の出までまだまだ先の草木も眠る時間。真っ暗な町の中は月の明かりだけじゃなくたくさんの人工的な明かりが町の一か所に続々と集まる。


「みんな、集まったか。各班、点呼を取って報告をくれ」


 俺はそう言うと、目の前に並ぶ五人に報告を促す


「騎兵班、二十五名。全員そろってるぜぇ」

「西魔班、十五名。欠員なしだ」

「飛翔班、六名。全員そろっているであります」

「援護班、十九名。ちゃんと全員いるね」

「衛生班、五名。オッケーにゃー」


 パルには衛生班って言うのを作ってそこの班長になってもらった。

 これは討伐隊ではあまり立てることのない班だが、今回は俺のわがままだ。俺の一番の相棒には本来なら援護班辺りに回ってもらうのが良いんだろうが、あえて衛生班に回ってもらったんだ。

 人から見たら甘いと言われると思う。ただでさえ寡兵なんだ。

 でも俺がこれを言い出した時、パルはすぐに納得してくれたみたいで、班長になってくれと俺が言う前に任せろって言ってくれた。俺にはこの班が必要だって、パルの方から言ってくれた。

 パルはいつでも俺が全力を出せるような場所に立っていてくれる。


「了解だ。超級魔竜討伐隊七十名。皆のような兵が誰一人欠けることなく揃ってくれてうれしいぜ。

 さぁっ、バカ共の祭りの準備を始めよう。

 ファイアドレイクだってある意味祭りの参加者だからな。せいぜい俺達とおしゃれなワルツを踊ってもらうとしようぜっ」


 俺がそういうと「そいつぁいいやー」「はっは、皿の上の主賓だな」と声が上がる。

 みんな気力が充実してるな。


「よし、バカヤロウどもっ出撃だっ! 俺達で俺達の町を守るんだっ!」

“オォォォォォォォ!”


 出撃の鬨の声と共に町の外へ行進すると。


「リックー、たのんだぜー」

「うまい酒たらふく用意したからな、無駄にさせねぇでくれよなー」

「おにいさーん帰ってきたらいっぱいサービスしてあげるわー」

「生きて帰ってくるんだよ」

「もう、横断幕もつくっちまってるからなー」


 町の人が見送ってくれる。深夜だってのに、みんな寝てないんだな。

 まっ、寝るにはちょっと俺達がやかましかったがな。

 大丈夫、絶対帰ってくる。

 また会おうな。


 こうして俺達は戦場へ向かった。



 ◇◆◇◆◇戦場となる平原◇◆◇◆◇



 日の出前に戦場とする作戦区域に到達すると、全速で打ち合わせ通りの配置についた。


『まもなく作戦開始時間になる。各班、準備はできてるか?』


 姿の見えない五人に問いかけると『応っ!』っと俺の耳元に五人が準備完了の声が届いた。


(いや、それにしてもこれ便利だな)


 そうぼやくと巻き貝の形をした小さなアクセサリーを触った。

 なんでも試作品だが咆哮術をモデルに作ったものだそうだ。今回是非使ってくれってギルマスさんが渡してくれたんだ。

 どんどん世の中便利になっていくな。


 実は今、俺は作戦区域内にいない。

 俺はファイアドレイクと一人で森のなかの道で対峙しているんだ。

 とはいっても、あいつはグースカ俺の前で寝てやがるけどな。

 ってか、道のど真ん中で寝てんじゃねぇよ。まったくマナーの悪い魔竜だ。ちょっと教育してやらないとな。


『いくぜっ、作戦開始だ』


 ファイアドレイクに向かって大きく息を吸う。


『起きやがれトカゲ野郎ッッッ!』


 俺は腹の底から叫んだ声を咆哮術でやつの耳元に直接叩き込む。

 ファイアドレイクはビクーンと首を跳ねあげた。いきなりの大声に頭がクワンクワンとするのか目を回している。

 へっ、声のでかさには自信があるんだ。

 さて、出だしは好調。そろそろしっかりと目を冷ましてもらうかな。

 俺は全力でファイアドレイクに向かって走る。


「ウオリャァ!」


 ファイアドレイクの横っ面に飛び蹴りをぶちこむとそのまま顔を踏み台にして距離をとる。


「このトカゲ野郎っ! 道のど真ん中で寝てんじゃねぇ! 俺が教育してやるからかかってきやがれっ!」


 魔竜に言葉が通じるかは知らないがとりあえず挑発してみる。


ギャオウウウゥゥン


 魔竜は目を三角につり上げて俺のほうを睨み付ける。ファイアドレイクは赤い魔竜だからわからないが多分顔を真っ赤にして怒っているだろう。


 キシャャァァァアア


 魔竜が立ち上がるとドスンドスン追いかけてきた。口から火をチョロチョロ漏らしてかなり怒っている。

 俺もファイアドレイクから付かず離れずの位置でチョロチョロ走り出す。


(まずは挑発成功っと、かなり頭に血が上ってるな。――うわっ)


 魔竜の口から放たれる火の玉ブレスが俺を目掛けて飛んでくる。慌てて俺はギリギリ避ける。


(うおぅ、俺の体くらいの火の玉飛ばしてんじゃねぇよ)


 さすがは超級だ、本来ならジャブみてぇなもんなんだが大きさが違うだけで必殺の威力になるな。

 っていうか、森の中で無節操に火の玉を飛ばしまくるのはいただけない。


(はぁ、火事にでもなったら後で怒られちまうな)


 怒らすとちょっと怖い人がいるんだ。そう思っているうちに間も無く森を抜けるところだ。

 俺はファイアドレイクを連れて森を抜ける。

 それと同時に朝日が射し込みファイアドレイクは目を細めて光に身を怯ます。


「いまだぁっ! 騎兵班追い立てろっ!」


 今度は咆哮術も使わずに叫ぶと、ファイアドレイクは俺の声に一瞬目を丸くする。


“オォォォォォ”


 後ろから突然押し寄せる騎兵班二十五名の声にびっくりしたファイアドレイクは、そのまま真っ直ぐ距離をとろうと逃げる。

 冷静さも欠いているし、いい感じにパニックになっているな。


「よし、次だ。飛翔班っ!」


 俺はパニックになっているファイアドレイクを横目に駆け抜けながら呼び掛けた。


「行くでありますっ! 自分に続けぇっ! 突撃(チャージ)っ!」


 羽翼族五人の前で先生がランスを構えながら羽を閉じる。

 そして切り揉みしながらファイアドレイクに向かって、殆ど落下するように滑空した。

 その後を他の羽翼族も順番に先生の軌道をそのまま等間隔になぞった。さすが先生、スゲェ練度の高さだ。


 何もなかったら見惚れていところだがそうもいかねぇ。


「援護班、西魔班フォローだっ」

『『応っ!』』


 騎兵班の後ろからフウリンさんが指揮をする馬八頭で引いたデカイ荷馬車が飛び出す、西魔班も詠唱(しかけ)始めた。

 そこで飛翔班のランスチャージが順番にファイアドレイクの鱗を破り突き刺さる。


グャアァォォオ


 ランスの重みを余すところなく乗せた攻撃だけでも強烈だ。それにファイアドレイク自身の逃げてたときの移動力が加わったら、さすがのファイアドレイクにもかなりのダメージだ。

 飛翔班はランスをすぐさま引き抜くと援護班の荷馬車へと向かう。

 さすがにこの攻撃でファイアドレイクは逃げるのをやめると、体を翻して攻撃の意思を見せた。

 ファイアドレイクは飛翔班を睨みながら口から火を漏らす。そこにファイアドレイクの後頭部に大きめの氷の矢が直撃すると、続けざまに十四本の氷の矢が殺到する。

 ファイアドレイクが一瞬だけ氷の矢の飛んできた方を一瞥するが注意を引くほどダメージはなかったらしい。

 だが、それでいい。馬に乗ってない西魔班が狙われるわけにはいかないんだ。

 ファイアドレイクは荷馬車に着地した飛翔班を向きなおすと口を開いた。


「援護班。火球いくぞっ!気を付けろっ!」


 俺が叫ぶとフウリンさんが身長の倍近くある豪弓に矢をつがえる。それと同時にフウリンさんのそばにいる、フウリンさんと似たような服を着た赤い袴の人が懐から字を書いた紙を出して備える。

 ファイアドレイクは火の玉を三つ飛ばす。

 火の玉は勢い良く荷馬車に襲いかかる。


「シッ!」


 フウリンさんの豪弓が矢を放った。

 矢が火の玉は二つを掠めると、火の玉は矢の勢いに消し飛び、矢はそのままファイアドレイクの口に向かう。

 ファイアドレイクも慌てて頭を下げて矢を避けた。


(フウリンさんスゴいな……)


 予想以上の出来事に俺は内心舌を巻いた。

 矢で火の玉ブレスを迎撃出来るとは聞いていたが、実際にその威力と精度を見ると感嘆した。

 だが、火の玉ブレスは三つだ。

 そうこうしているうちに三つ目の火の玉が荷馬車を襲う。

 だが次の展開は予想通りだ。


【ーーーーーーーー】


 フウリンさんのそばにに控えていた人は紙を前にほうり投げる。すると紙から人ならぬ声が響き、見えない壁が火の玉を打ち消した。

 これは東方術の防御の式紙だ。個人としては抜群の防御力が期待できる。

 荷馬車はメンバーの殆どを馬の荷馬車の制御に割いている。いくら平地戦とはいえ馬を走らせながら荷馬車を引くと跳ねまくるからだ。

 さすがに跳ねまくる足場では着地はできても離陸に困る。

 だから実質荷馬車の防御にはさっきの二人のみが担当となる。


 まぁ、でも火の玉ブレスくらいじゃ陥落しそうにないな。


 これで、移動しながら離着陸ができて防御力も十分な基地ができたってわけだ。

 これで俺の作戦通りの配置にそろった。

 俺も騎兵班と合流する。


 さぁっ、ダンスに付き合ってもらうかっ。


「いくぜぇぇぇ野郎共っ!狩りの時間だぁぁぁ!」

“オォォォォォォ!”


 俺達騎兵班が雄叫びをあげてファイアドレイクに強襲する。

 ファイアドレイクは依然として飛翔班が第一脅威と認識しているらしく荷馬車に向かおうとする。


「行かせるかよっ! 野郎共っ、今夜の晩飯に俺達の存在を刻み込んでやろうぜぇ」


 俺はそう言うとファイアドレイクの後ろ足の関節部分に剣を叩きつけた。続けて騎兵班の全員が剣や斧や槍で攻撃する。何人かの攻撃が跳ね返される。

 弾き返された班員の顔が驚愕の色を見せた。


 あちゃー、それじゃダメだ。


「普級以下のファイアドレイクじゃねぇんだっ! 体の外側の鱗はめちゃくちゃ硬ぇ。体の内側や関節を狙うんだっ。的はでけぇんだ落ち着いてやるんだっ」


 弾き返されていた班人達はハッとした顔をするといくらか冷静になって攻撃しだした。ファイアドレイクの注意がこっちに向き出したな。


「やつの背後に回り込むように動け。前に出ると爪と牙でやられるぞっ。遅れるなっ」


 騎兵班が背後に回ろうとするとファイアドレイクも追いかけるようにぐるぐる回る。


「うわあっ」


 槍を持っていた冒険者が前足で馬から撥ね飛ばされた。乗り手のいない馬はそのまま森に逃げていった。


「グウッ」


 撥ね飛ばされた冒険者は起き上がろうとするが思うように力が入らないようだ。戦闘中だから戦闘能力を奪ったやつについてはファイアドレイクも捨て置くようだが、いずれ踏み潰されるかもしれない。

 このままじゃやべぇな、何人か動きが鈍くなったか。

 本来なら俺も気になるところだが。


「気をとられるんじゃねぇっ! あいつは無事だっ。俺の相棒を信じろっ」

「そうですにゃー。風は二十、闇を三。風は押し闇は風を背に集め我を運べ」


 パルがそういいながら疾風の如くファイアドレイクの影から飛び出すとやられた仲間を担いで衛生班のいる森の中に消えていった。

 それを見て騎兵班が意気を取り戻す。

 さすがはパルだ。

 俺がパルを衛生班に回した理由がこれだ。パルの治療の技術がすごいのは当然だが、今回は負傷者をすぐに戦線離脱させれることだ。パルのスカウト技術と器用な西魔術の制御でなせる技だ。

 これで俺は負傷者を気にせず百パーセントの力を目の前にぶつける事ができる。



 そうしているとまた飛翔隊が飛び上がった。先生の号令のもとでランスチャージが開始される。だが二度目はそこまでダメージを与えてないみたいだ。

 飛翔隊は攻撃をしたあと高度を上げて大きく旋回してもう一度攻撃をすると離脱する。

 その離脱を援護する氷の矢が降り注ぐとファイアドレイクは苛立たしげに飛翔班を見送る。騎兵班も勿論その間も攻撃を続けて注意をこっちに戻す。

 最初飛翔隊の攻撃を見たときはもしかしてこのまま削りきれるのかとも思ったが。今度は警戒されているし、そこまで楽はさせてくれないようだ。

 だが、これでいい。

 もとより致命的なダメージを与えれるとは考えていない。重要なのは気を散らすことだ。上下左右に揺さぶってチャンスを作る。



 そうこうして同じ手順で三回、四回目の飛翔班の突撃が終わる。

そうしたら、今まで俺達騎兵班とぐるぐる回っていたファイアドレイクがピタリと止まると前足を伏せ出した。

 これはっ!


「気を付けろっ! 尻尾がくるぞっ! 後ろ足に張り付くんだっ、急げっ!」


 俺が言うと急いで後ろ足に集まり出したが予想より早く尻尾が空気を唸らしながら周囲を薙ぎ出す。


「ぎゃあ」

「うがっ」


 二人脱落かっ。でも、尻尾の根の方でまだ助かった。

 とはいっても、あれは太い棍棒でおもっいきり殴り飛ばされたようなもんだ。

 そう思って見てみると、軽傷とは言い難いが息遣いは感じる。


 ……大丈夫だ、パルならなんとかしてくれる。


 しかし、ここに来て攻撃のバリエーションが増えたってことはそろそろパニックも収まってきやがったって事か。

 でも、ファイアドレイクが集中出来てねぇのは変わらない。もっとイラつかせねぇと。



 そう思いながらさらに五回、六回。飛翔班の突撃が続いた。

 ファイアドレイクからの攻撃は避け続けてるが、俺はともかく、班員は綱渡りのように攻撃を避け続けてるからさすがにストレスが限界近いだろう。

 そろそろ不味いかもしれない。

 ファイアドレイクの吐く息からは漏れる火がかなり大きくなってきてるからかなり頭にキテるのは確かなんだが。


 決め手が欲しいな。うーん。


 そう思うもののファイアドレイクの尻尾攻撃が飛んできて思考は一時中断される。

 俺は空気を唸らす尻尾の根本近くを見て気がついた。


 鱗にヒビが入っている……


 固い鱗におおわれている尻尾に攻撃した覚えはないがなぜだ?

 そもそも硬い鱗に覆われた尻尾はそこまで可動範囲が広くないはずだ。

 それを俺らが当たらない位置に逃げるところを、威勢よくビッタンビッタン振り回してたもんだから、自分の力で割ったんだろう。


 ならっ、ここだっ!


「チェェアリャッッ」


 俺は振り回される尻尾に向かって勢いよく跳ね飛ぶと割れてる鱗の部分にバスタードソードの刃を合わせ叩き斬る。


グアアアァォォォォン


 ファイアドレイクの頭が天に跳ねあがって一際でかい声があがると、目が真っ赤に光出すと俺に顔を向け身を屈めだした。

 恐らくこの辺一帯を燃やし尽くすような火焔ブレスを空から俺に浴びせる気だろう。

 火の玉ブレスなんて話にならない範囲と威力だ。

 すぐに逃げないことにはこれが放たれれば俺だって逃げれずに死ぬ。確実に骨も残らずだ。


「西魔班今だっ! 飛翔班六星陣形で上空待機っ! 騎兵班散開だっ、全力で離れろ!」


 だが、これこそ俺が狙っていたチャンスだ。

 騎兵班には散開の指示を出したが、俺はまだ引き付けねぇといけねぇから離れることはできない。

 でも、大丈夫だっ!

 俺の指示にまず西魔班が動く。


「いくぞっ! 今こそ我らが西魔術師の真骨頂を見せる時だ。総員抜剣っ、西魔礼剣を掲げろっ!」


 西魔班は水晶がはめてある柄に刀身に沿って楕円形の穴が開いている剣を抜いて掲げる。


「合唱っ!」


 ライガさんがそう続けると西魔班は剣を胸に下ろし両手で柄の水晶を握る。


“風は二十、闇を二十”


 ライガさんを含めて十五名が同時に(たね)を出すと握った水晶を緑と黒のまだらの珠が包む。


“風は渦を巻き闇は風を吸い上げる”


 西魔班が途中まで詠唱(しかけ)ると珠が刀身の穴にのぼり、そこでもう一度剣を掲げる。

 そして剣先をライガさんの掲げる剣に向けると、ライガさんの剣に十五人の珠が集まる。

 集まった十五人の珠はかなり巨大だ。ライガさんの身長をゆうに越える緑と黒のまだらの種がライガさんの剣に宿った。


「風の龍となり()を巻き上げ討ち滅ぼせぃっ!」


 ライガさんが残りを詠唱ると、助走をつけて剣をファイアドレイクに向けて全力で降り下ろす。

 空気をかきわける高音が鳴リ響いたかと思うと、既に空中で羽を広げて大きく息を吸うファイアドレイクに向かって巨大な珠が豪速球で飛んでいく。

 それを見て俺もやっと距離をとるべく走る。


「飛翔班、作戦通りにいくであります。巻き込まれるなでありますよ」


 飛翔班は空中で距離を十分保ちながらファイアドレイクを囲む。

 そんなことも目に入らないファイアドレイクが今まさに地獄の業火を再現しようとすると、ライガさんの飛ばした珠が直撃する。


 一瞬風の渦がゆっくり巻いたかと思うと、瞬時にファイアドレイクを包み込む巨大な竜巻になる。


 すでに口から漏れ出していた火焔ブレスも全て吸って巻き上げて竜巻は業火を纏う。


ギイャアオオオォン


 全身を風に裂かれて、その傷口から自身の炎に焼かれるファイアドレイクは叫び声をあげた。

 竜巻の出ていた時間はそう長くはなかったが、中から出てきたファイアドレイクはボロボロになりながら必死で高度を維持している。


「やつを地面に叩き落とすっ! 突撃チャージッ!」


 アルタイル先生が号令をすると待機していた飛翔班は同時に突撃をしファイアドレイクの羽に六つの大穴を開ける。


グゥアグアッ グゥアッ


 ファイアドレイクが一瞬もがくが穴の空いた羽ではさすがに無理らしくまっ逆さまに落ち出す。


「オオオオォォォォォッッ!」


 俺は落ちてくるファイアドレイクに飛びかかり、無防備な喉をバスタードソードで裂いた。


「まだかっ」


 首を撥ね飛ばすつもりでいた俺はあと一息、外側の硬い鱗に斬ってる途中で弾かれる。俺はファイアドレイクを蹴ると先に地面に着地した。

 そして今度は地面に激突した瞬間にファイアドレイクにもう一度飛びかかる。


「ダアァァァァァァリヤァァァッ!」


 落下しながら全身で剣喉元に向けると、さっき切りつけた傷口から剣先を通し地面まで貫いた。


ッッッッッッ!


 声もあげれないファイアドレイクは完全に絶命した――



「ウオォォォォォッ! 超級討伐っ、完了だぁぁぁぁっ!」



 俺はファイアドレイクの首の上で立ち上がり右手を掲げて勝利の咆哮をあげた。


“オオオォォォォォォォォォォォォ!”


 戦場が(つわもの)たちの勝鬨で溢れた。




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