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同志の死

「ハイパーキック!」

 豪快な飛び蹴り! だが、外れる。

 体勢の崩れた瀬良太にアサルトライフルの銃口が向けられた瞬間、正確な射撃がリーズの隊員を撃ち抜き、瀬良太を助けた。

「遊ぶな!」

 念動力のシャシュが、念動力で命中に補正を付けた銃撃を使ったのだ。

「助かったよ。ブルーフォース!」

 瀬良太は満面の笑みでシャシュに手を振って、お礼を言った。

「もはや現実など見えておらんのだな」

 言って、シャシュは軽く手を振りかえした。

「暴走した超能力の弊害か。この場合は上手く作用しているようだがな」

 やはり不自然だとサキミは言った。

「だが、あれじゃ指示が出せない。簡単な指示くらいは聞いてもらおうと思っていたのだが……」

 リンネは不安げに言った。と、言うのも瀬良太のおかげでサイムズ部隊を順調に撃破出来てはいるが、残った対サイムズ部隊は、今ここにいる者だけなのだ。

 たった四人でサイムズ部隊を撃破しなければならない。数は不明だ。

 さらに究極のサイムズと言うものがあると言うではないか。

「どこかで未来が変わったのか……?」

 リンネの背筋は凍り付いていた。

「本当にあの子が死ぬだけで、この戦い勝てるのだろうか」

 不安と言うより、疑わしい気持ちに駆られてサキミは言った。

「言うな。目の前にいるんだぞ」

 リンネに睨まれるぞ、とシャシュは制した。

「俺達を俺達と認識していない。お前はブルーフォースで、俺はバトルランサーだ。リンネはなんだと言ってたか」

「ほら、来なすったぞ!」

 シャシュが的に気付くと、慌ててサキミは身構える。

 瀬良太が先行して突撃している。

 もう五人に取り囲まれている。

 サキミは予知能力を使い、一番無防備なのを探る。

「あの右のやつだ。銃を構えているやつだ。瀬良太を狙撃するつもりらしい。数秒後もあのままだ。やつを狙撃しろ」

 シャシュが念動力の弾丸で、正確に頭部を射貫いた。

 するとこちらに気付いて、二手に分かれ襲ってくる。

 一人は自己強化らしい。素早く強襲をかけてくる。

「しまったな。瀬良太を使いたいが……」

 瀬良太を戻して、近づけさせないようにしたいのに。

 リンネは、自分だけでも自己強化を使い、その役割をしようとした。

 だが、違う方角から、同じ自己強化プロテクターの兵士がリンネに突撃してきた。

「お前が頭だな!」

「リンネ! そいつはお前がなんとかしろ! こっちは二人でなんとかする!」

 シャシュは銃を撃って牽制するが、自己強化能力の反射神経には通用しない。

 サキミは助けようと、予知を行うがテレポートでもされたみたいに、位置や動きが元と違うためアドバイスが出来ない。

 そして予知してしまった。大型ナイフをシャシュに突き刺す自己強化能力兵の姿を。

「シャシュ。いかん、逃げろ! 身を守れ! ナイフで来る!」

 予知能力者の絶望。たった一瞬先でも見えてしまう都合の悪い光景が、現実になる瞬間だ。

 だが、幸いした事に急所を一撃ではない。シャシュは刺されながらも反撃をする。

 瞬間予知した。数秒後やつは体勢を崩す。

 崩した。今だ! サキミはアサルトライフルを掃射する。

 気味の悪いダンスを踊り、自己強化は沈んだ。

 もう一人いたはずだ。サキミが辺りを見回す。

 ふと、真っ暗闇が予知出来た。

「なんて……こった……」

 何も予知出来ない。それは死ぬと言う事か。

 恐怖に足がすくむ。

「サキミ! 何をやってる! 後ろだぞ!」

 シャシュはサキミを助けようと体を動かすと、ナイフの傷が痛み、一瞬怯んだ。

 念動力によって、サキミの足下の瓦礫が移動し、サキミは体勢を大きく崩した。そこを狙撃されたのだ。

「予知能力で戦うものは、予知能力によって死ぬか……。俺の死を、サトリは知っていただろうか……」

「サキミ! おのれぇ!」

 念動力の射撃をお見舞いしてやる。銃の射程距離内なら、どこへだって正確な射撃をする事が出来る。

 頭部を一発。サキミの仇はすぐに討つことが出来た。

 しかし、傷が深い。長くは持たないだろう。

 銃声を聞きつけ、別の部隊がシャシュに銃を突きつける。

「くうぅ……! どけぇ!」

 シャシュの危機に駆けつけてやりたいが、邪魔をされて近づけない。

「リンネよ……。勝たねば承知せんぞ!」

 半ば朦朧とした頭では、死への恐怖も死後の世界の有無も気になりはしなかった。

「あと一息だ。リンネは生け捕りにしろ。まずは孤立させる」

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