再び大戦争④
「以外とあっさりだったな」コルーパがニッと笑って言う。
「戦いなんてそういうものさ」
そうだな、コルーパが素っ気なく答える。
「お前の魂、渡しとくよ」
「ああ」
僕の右手から青い炎の塊がコルーパに向かって飛んだ。
「ちゃんと、戻ったようだ」コルーパが舌を出していった。
「そもそも、魂をなんで切り離した?」
「護身用だよ。こんなところで死んだら意味がないだろ」
ふーん。
「まあいいや、帰ろう」
石の力を使うと、まばゆい光と共に、ゆらゆらとした、環が目の前に出てきた。僕とコルーパは光の中をくぐった。
光の向こうは儀式の間だった。僕とコルーパが光からでると、周りを見回した。
「えッ?」
首相が二人、向かい合っていた。まったく状況が読めない。
「天馬、伏せろッ!」コルーパが叫ぶ。
と、同時に片方の首相の足下から黒い液体が飛び出して、僕めがけて飛んできた。反射的に伏せてよけると、僕の上からコルーパが飛び出して、黒い液体に向かった。コルーパは燃えていた。そのまま水に体当たりすると、水は形を変えて、よけてそのまま儀式の間から消えた。
「おい、コルーパ大丈夫か?」と僕は燃えていたコルーパが心配になって聞いた。
「いや、大丈夫」
ふと見ると、コルーパは燃えてなかった。どういうことだろうか。
「以前、俺には喋るという能力があると言ったはずだ。実は、他にも能力がある。物質なら何にでもその形に変える事ができる能力だ」とコルーパは言った。
「で? さっきの奴は何なんだ?」
コルーパは首相と顔を見合わせた。首相が頷くと、コルーパが話し始めた。
「天馬が、空間と空間の狭間からでたとき、そこにいたのは首相じゃないんだ。さっき、天馬の事を襲った奴だ」コルーパは驚く僕をよそに続ける。「奴は俺たち三人をまとめて殺そうとしてたんだ」
「どういうことだ? 僕は空間と空間の狭間にいるし、コルーパはあの世だ。首相だけ襲えばそれだけリスクが少ない」
「天馬、それは違う。たとえ、違う次元、空間にいたとしても、それは『死』ではない。死を受け入れ、死んだわけではないんだ。だから、生きてる。生きてれば、この次元――この世にでてくることができるから、意味がないんだ。ほら、俺は殺される事以外で死なないって言ったろ? だから、あの世に魂がついてきた」
「じゃあ、なんでコルーパはあの世に行ったんだ?」
だんだんこんがらがってきた。でも、知りたい事もいっぱいあって、不完全燃焼だ。
「それは、私から説明します」首相が言った。「コルーパには奴から身を守るために、安全策としてあの世に行ってもらったんです」
「安全策?」僕が聞く。「最終兵器が消え去った今、何の危険があると?」
「全宇宙の星が民主制に移行になったはずが、軍事に特化した星が未だに地球を狙ってるんです。それは、『ドグラクス』。彼らは、今回の宇宙戦争の黒幕だったのです。彼らは、反政府軍を煽って、兵器を無償で譲渡し、この戦争へと導いた。が、作戦は失敗し、念のために送り込んだ最終兵器も消滅した」首相はふうと息をついて続けた。「そして、彼らは新たな策を考えた」
首相は淡々と話しているけど、まったく分からない。でも、疑問は残った。
「どうしてドグラクスは地球に固執するんです?」
待ってましたとばかりにコルーパが口を開いた。「前にも話したと思うが、地球は資源が豊富だ。宇宙の中でもかなり豊かな星なんだ。加えてドグラクスは資源に乏しい。しかも、軍事国家だから、兵器開発は必要不可欠。彼らは、兵器を開発し、売って、その金で輸入してたんだ。彼らは崖っぷちの状態で、最終兵器を超える火力を持った新たな生物兵器を生み出した」
「それが、さっき我々を襲った奴、ドリグランです」首相が言う。「奴が敵ならば、今の天馬さんの力では太刀打ちできない」
「石の力を使っても?」僕は聞いた。
「使ってもです」
絶望だった。今度こそ地球は終わるのか。
コルーパを見る。緊迫した状況だが、それなりの余裕が顔に出ている。
「だが――」コルーパが口を開く。「解決策がない訳じゃない」
首相が頷いて後を続けた。
「奴は今地球に潜伏中。しかし、所詮兵器。命令に従っているだけ。そこで、天馬さんに新たな仕事を頼みたいのです」
「新たな仕事?」
「ええ。命令を出している人物――すなわち、ドグラクスの最高司令官、タウチーを暗殺する事」
暗殺・・・・・・暗殺って、人殺し? それは、犯罪だし、僕もしたくない。ふと首相の顔を伺う。さすがに、やるせない表情だった。
「非常に言いにくい事ですが・・・・・・天馬さんは多数のドグラクス星人を殺している」
「えっ」
それは驚愕の事実だった。僕はそんなことをしていない。
「最終兵器が責めてきたとき、軍艦も一緒だった。その軍艦やUFOはドグラクス星が出した援軍。天馬さんは見事に破壊していったけれども、中のドグラクス星人は死んだ・・・・・・。天馬さんはもう、殺戮者なのです」
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