破壊と裏切り⑤
宇宙船は瞬時に宇宙空間に飛び出すと、そのまま巨大な船に連結した。僕らはそのまま巨大な宇宙船に移され、牢屋に入れられた。
「壊そうとしたって無駄だからな。こいつは、石の力を使ってもびくともしない」
門番が自慢げに言う。僕らはそれを聞き流して話し合った。
「つまりどういうことなんだ?」
「サイザンフ星人はこれを待っていたんだ。彼らは地球を我がものにしたがっていた。だから、最終兵器を送り込んだ」
「ちょっと待って」僕はコルーパの顔の前に手を出してストップをかけた。「最終兵器ってかなり前からあったよね。それこそ一万年前から。しかも、最終兵器を送り込んだのは反政府軍だ」
「ああ、そうだ」コルーパは頷く。「一万年前は帝国時代だ。地球を奪っても誰も文句は言わない。だが、天馬が宇宙外交官に任命されたときはどうだった? そのときサイザンフ星が地球を支配したら他の星からの避難が集中するだろう。そうなったら、帝国を作り上げる前に滅んでしまう。だから、反政府軍という形でドグラクス星人と最終兵器を送り込んだ。地球は勝った。これも計画の一部だった。地球を巡る見えない火花が散っていた宇宙での、まさに冷戦状態が解けたんだ。戦う理由がなくなった星達は兵器を捨て、平和を愛す民主制へと移行したわけだ。しかし、ドグラクスは以前独裁制だった。彼らの星には何ら資源がない。原料を得ては兵器を作り、それを売り、またその収入で原料を買う。ということを続けてきたから、そう簡単には民主制へ移行はできない。それを見越していたサイザンフ星人は密かに帝国締結を結び、ドリグランを作らせたんだ。最終兵器を越えた兵器が大量に地球に攻め込み、一瞬にして占拠したのをみた他の星は、武力では抵抗できないことが分かったんだ。そのうち、サイザンフ星から呼び出しがかかる」
長い長い説明を聞いた後、ゴクンと生唾を飲んだ僕は、聞いた。
「もちろん、地球も呼び出されるんだよな?」
「いや、それはない」コルーパはきっぱりと言った。「地球は、もうすでにナハルタ帝国のものだ。世界政府が陥落した今、代表者がいない」
それは地球が死の宣告を受けた瞬間だった。
「コルーパはどうしてそんな事を知っている? 知ってたなら、未然に防げたはずだろ?」
「記憶に厳重なロックがかかっていた。それこそ、宇宙最高のハッカーやAIが千年かけても解ける事ができないような、厳重ロックが」
「なんでそのロックが解けた?」
「バンバルジの提案で天国にいったときだ。このときに、帝国を作り上げたのだろうが……。一度魂が抜かれ、肉体と精神だけの状態の時、いわば仮死状態から魂が入った事により、肉体と精神と魂が一気につながった。その衝撃でロックが解けてしまったんだ」
「でも、そこからでも何とでもできたはずだ」
僕は食い下がる。
「いや、もう手遅れだ。ドリグランができた瞬間から全てが手遅れだった。何故、俺が天国にいっていた短期間であんな生物兵器ができたのかもわかったんだ」
コルーパの顔に影が落ちた。僕が、なんで? と聞くと、声を低くして言った。
「俺が、ドリグラン初号機だったんだ」
新たなる新事実の暴露の衝撃で、僕の口はポカンと開いた。
「で、でもコルーパは人を襲ったりしないだろ?」
「ああ。そういうプログラミングは一切組み込まれていない。だが、俺の設計図があったから奴も短期間で作り上げられた」
「コルーパで仲間でよかったよ。いや、ほんとに」
「ありがとう。しかし、問題は地球が会議に出る事ができない以上、この状況を打破できない。もっとも、ドリグランをなんとかする必要があるが」
そうだなぁ。僕は腕を組んだ。薄暗い牢での考え事はできない。集中力が保たない。代表者、代表者……。
ああ!
「いるじゃないか、代表者! ここに!」
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