魔物の国が終わるらしい
勇者が魔王を倒した後の、魔物の国。
「どの本にしようか」
僕は呟く。
「♪」
魔物の少女は上機嫌に本を読んでいる。
簡単そうな本だけど、理解できているかはわからない。なにも、バカにしている訳じゃない。ただ、いつも同じ本を読んでいるから。なんとなく。
ヒトの僕と、彼女しかいない図書館。
魔物の国の、図書館。
「王様が倒されたんだってさ」「人間の勇者に」「国が終わる、人間の国になる」「こわいこわい」
外からは、声が聞こえてくる。
勇者が、魔王を倒したらしい。
僕と同じ異世界人かは、わからない。
魔物の国が、終わろうとしている。
ヒトが治めるようになるだろう。
奴隷の僕としては、嬉しいけど、寂しくもある。
「これかな」
「ありがとー」
「待って下さい」
「?」
キョトンと、傾がれる。
純粋な顔つき、僕は今、彼女の目の色が緑色であることに気付いた。綺麗な、海を連想してしまう、緑色。
「これ、あげます」
そう言って、僕は本を差し出す。
敬語なのは癖ではない。
僕は、この魔物の国に転移され、奴隷にされている、いや、多分、いたから。
図書館の管理、家も図書館。食事は残飯。
「けど、むずかしい、この本。
くれるなら、あの本ちょうだい」
「確かに、今の貴女様には難しいかもしれません。
でも、いつか、わかるようになるはずです」
少女は困ったような表情をしつつも、受け取ってくれる。
「魔物の国は、終わろうとしています。
だから、もしかしたら、この図書館も終わるかもしれません。魔物に考える力は要らないから、と。あってはいけないから、と。
その前に、本が好きな貴女様に、本を渡しておきたいと思っていました。いつも楽しそうに本を読むから」
「どれい、わたしたちのくにがおわって、うれしい?」
「嬉しいけど、寂しくもあります」
「そっか、よかった」
と言って、微笑んでくれた。
そして、1人になる。
相変わらず、外からは国の未来を心配する声。
図書館は、静か。
「まさか、国が終わることを体験するのが異世界とは」
奴隷で、嫌なことしかなかったけど、やっぱり、自分の国だから、なくなるのは寂しいし、悲しいな。
まあ、あの子に本を渡せてよかった。
ありがとうございました。




