表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/23

0

「引け、ロウラ! 兵はほぼ全滅……もはや勝機は万に一つもない!」

「万に一つも勝機があるのですね? ならば勝ったも同然!」

「計算もできんのかこの馬鹿ぁ!」


 恩師の絶叫を背に、私は焦土を蹴った。

 三千の精鋭は、すでに物言わぬ炭と化した。僅かに生き残った者たちも、心を折られている。

 恐怖で剣を投げ捨てなかったのは私だけ。ならば、私が進むしかないではないか。


 彼方に据わる魔王の猛攻は、何物をも寄せ付けない。

 絶え間なく放たれ続けるのは、触れるだけで命を削り取る魔弾。


 ――避けられない。


 本能が死を告げる。だが、足は止めない。

 騎士道とは、死地においてこそ輝くもの。

 肉体が滅びようとも、その喉元に牙が届けば私の勝ちだ。


「おおおおおおッ!」


 私は迫りくる滅びの光へ、真正面から飛び込んだ。

 熱波が肌を焼く。視界が白に染まる。

 ここまでか――。


「……ん?」


 衝撃が来ない。痛みもない。

 恐る恐る目を開けると、そこには――場違いなほど退屈そうな顔をした男が立っていた。


 甲冑も着けず、奇妙な仕立ての黒い服。

 戦場には似つかわしくない、泥一つついていない革靴。

 男はあろうことか、魔王の攻撃を背にして、私を見下ろしている。


「き、貴様何者だ! ここは危険――」


 警告は、轟音にかき消された。

 太陽の如し火球が天を赤く染め、破裂する。鉄すら瞬時に溶解させる熱の雨が降り注いだ。

 直後、男は人差し指を自身の口元に当てて呟いた。


「【主人公には、決して弾は当たらない】」

 

 終わりのない花火が男の背後で輝き続ける。それは幼い頃に見上げた流れ星と同じ光を瞳に描いた。

 まるで世界が初めからそうであったかの様に、魔弾は私たちの周りを素通りしていく。


 私はまだ生きている。そして男も、一度の被弾も無く地に足を付けている。


「あーあー、伝わってるかな?」


 男は喉を揉みながら言った。

 人種は分からない。でも、この国の言葉を話している。


「君を助けに来た。俺を盾にしてさっさと逃げるぞ」

「な、何故私などを……」


 たった一人の消えゆく灯。死地に踏み入れてまで救助する利点はない。


「それは――君がこの世界の主人公だから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ