ヒモと猫と
ハルカスが、掃除と整頓が苦手なのはよく分かる。
研究者って、そういうものなんだろう。
……いや。ただの性格か。
戻されない本が積まれ、薬品の瓶が、そこかしこで倒れている。
さすがに瓶は栓がしてあるな。爆発は……しないだろう。
たまに誰かが来て、掃除してくれるらしい。
だが今は忙しくて来られないそうだ。
おかげで、部屋は荒れ放題。
「ちょっと出かけてくるよ」
ハルカスは、猫語を使うのをやめた。俺が人間の言葉を理解していると分かったからだ。
それに気づいた後、なんか悶絶してた。
……恥ずかしかったんだな。
さて。ハルカスは出かけるらしい。
だが俺は、天井から下がったヒモと格闘するのに忙しい。
お構いなく。
小一時間ほど戦った。強敵だった。
積まれた本の上に、ちょうどいい日差しが差し込んでいる。
本日の寝床、決定。
さあ昼寝、と思った瞬間、足場が悪くて、落ちた。
失敗。
やべぇ。
床の瓶が、開いた。
本が濡れたら、悲しむかな。……とはいえ、拭けない。
なんだこれ。エナドリみたいな匂いがする。
好奇心に負けて、ぺろり。
……うまい。
ぺろぺろ。
次の瞬間、俺は人になっていた。
全裸で。
そして扉が開き、ハルカスと目が合う。
◆◆◆
健康な男児の全裸を見ても動じないロリババア、まじ最強。
……あれ?前いた世界なら、ラッキースケベするシーンじゃないのか。逆か。
ともあれ、現在の俺は、再び猫。
ハルカスの太ももで、体温を分け合っている。
「暖房の節約になる」
……らしい。
まぁ、二人で話すには、ここが定位置になりつつある。
ハルカスが、さっきの現象を説明してくれたが、半分も理解できなかった。
とりあえず、あの薬のおかげで、俺の魔術回路が開いたという。
異世界人な俺には、魔術回路なんてさっぱりだ。
それを使えるのが魔法使いで、さらに練り上げているのが魔導師らしい。
その辺、話が長いので途中寝てた。
――結論!
・十二時間寝ると一時間、人間に戻れる
・戻ると、全裸
……だめじゃん。
時間は短いし、全裸出現即・逮捕――にゃーん。




