表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

俺は猫である。名前は思い出せない。

大型の魔物の頭に、その英雄は猫のように俊敏に音もなく飛び乗る。

かつての勇者が得意とした稲妻を両手に宿わせ雷鳴を轟かせる。


魔物は、咆哮することもなく、光に包まれ、崩れ落ちた。


英雄はいない。


猫だけがいた。


◆◆◇


勇者召喚が失敗した。その噂は瞬く間に広まった。


地方の小国に過ぎない。


他国との戦争は英雄同士の一騎打ちで決まる世界。



だからこそ、強い英雄が必要だった。


だが、それは失敗した。


などという話を、大魔導師ハルカスは猫に話す。


大魔導師ハルカス。


召喚失敗の責任を負い、宮廷魔導師の座を去った。


「これくらいが気楽でいい」


窓の外には街の喧騒。宮廷にいた頃とは違い、気楽に生きている。


ただ、部屋を掃除してくれる者がいないのが難点だ、さらには最近、猫も拾ってしまった。



名前は、まだない。




◇◇◇ 猫 ◇◇◇


雷に打たれたと思ったら、誰かの太ももにいた。


とても眠い。


食って、寝るだけの生活。


極楽だ。


俺の寝床は、やたら落ち着きのある少女。名前は、ハルカス。その太もも。


厚手のローブがちょうど良く馴染む。


見た目よりずっと年上で、

自分では、ばあさんと言っていた。


実年齢にはあまり興味がない。

寝心地が重要なのだ。


「にゃん」


ハルカスが言うには、俺は召喚失敗のとき、魔法陣の中にいたらしい。


で、すぐに逃げたという。


なーんにも覚えてない。


宮廷を去るとき、庭で怯えていた俺を拾って、城下町に部屋を借りたんだとか。


ハルカスが一人で住むには広すぎる家だ。


数日、散歩もしたが、飽きた。


今では、ハルカスの太ももが定位置。


難しい顔で書類を読んでいたり、時々、俺を撫でたりしている。

……と、ここまで考えて、一つ疑問が浮かぶ。



「にゃにゃにゃーーん」

(俺、なんで猫なんだ)



◆◆◆


俺は猫である。名前は、まだない。


いや、人間だった頃の名前は、あったはずだ。思い出せない。


別の世界から来たはず。人間だったはず。はずだらけ、確証がない。


なんせ今は、けむくじゃらの猫で、ハルカスの足を揉み揉みしているだけの存在だ。




「にゃにゃん」【おい、なんか知らないか】


問いかけても虚しい。どうせ猫の言葉なんて、通じない。


「にゃにゃんにゃん」【ようやくお目覚めかい】


あーん!?


通じてる。


びっくりして、瞳孔、全開になったわ。



しばらく、ばあさんもとい、ハルカスと話す。他人から見たら、一人でにゃんにゃん言っているだけだ。


……可愛いか。



ともかく、俺が召喚失敗した勇者らしいことは分かった。


猫だけど。




「あの場から逃げたのは正解だよ。捕まってたら、どうなっていたか分からない」


勇者の代わりに猫がいたら、それはどうなるんだろうな。

力の一部は残ってるらしい、解体して取り出されるのか?



「にゃんにゃん」【俺が人間だと分かって拾ったのか?】


「どっちでもいいことだにゃん」


【事情は分かった。さて、人間に戻してくれ】


「戻し方なんて、知らないにゃん」


くう。腹立つ。


……あー、だめだ。なんか思考が続かない。


飯を食って、そのまま寝た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ