5決意
それからも何度も勇者パーティーは魔界に攻め込んでくる。その度に魔王様が追い返すのだが勇者パーティーはやって来る度に強くなっていて、今回の魔王様と勇者パーティーの戦いは熾烈を極めていた。私は全力で魔王様に強化の術をかけている。だというのに押されている。あの国に私以上の強化の魔力の持ち主なんていなかったのに。
「魔王様!」
魔王様が腕を怪我した。私は思わず駆け寄り、魔王様を自らの防御の結界の中に入れる。癒しの魔術も多少なら使える。切断までいくと治せないけどこのくらいの傷なら治せるとほっとする。癒しの光が魔王様に降り注ぐ。よかった。ちゃんと治った。
「な、君は! 聖女じゃないか!」
フードが外れていたようだ。バレてしまったなら仕方がない。
「だったらなに?」
「行方不明になったんじゃ?」
「まさか、魔王に連れ去られて?!」
「もしや、洗脳されているのか?!」
勇者パーティーは好き勝手言っている。
「洗脳されてるんじゃなくて正気になったのよ! あなたたち全員に抱かれろなんて狂気の沙汰じゃない!」
「君はいったいなにを言ってるんだ? 勇者とその仲間に抱かれるんだぞ、名誉なことだろう」
「複数人と婚前交渉なんて不名誉以外の何物でもないわよ!」
勇者パーティーは理解に苦しむという顔をしている。理解に苦しむのはこっちだ。
口を開こうとした勇者が消えた。次に魔術師が消えた。それから神官が消えて、聖女らしき女の子が残った。
「それにしても不思議なんですよね。あなたの力が私を上回っているとは思えないのになんであの人たちはあんなに強いんですか?」
「そんなの決まってるじゃない。聖女を抱けば抱くほど強くなるんだから!」
なるほど、そういうカラクリか。そう思っていたら女の子も消えた。
「全員別々の場所に飛ばした。これでしばらくは攻めてこないだろう」
「帰りましょうか、魔王様」
魔王様が差し出した手を取れば見慣れぬ室内だった。
「ここは?」
「私の部屋だ。ここなら誰にも話を聞かれない。ルアーナ、今日私にかけた強化の術は全力か?」
「はい、全力でした」
「……そうか」
魔王様は視線を足下に向けた。その顔は物憂げでなにかを考えているようだった。きっと私たちは同じことを考えている。それを魔王様に言わせるのは嫌だなと思って私は口を開いた。
「魔王様、私を抱いてください」
「前にも言ったはずだ。そんなことのために君を庇護しているわけではないと」
私のヘーゼルの瞳と絡み合ったそのスカーレットは強い意志を宿している。
「あなたに死んでほしくないんです」
「君は私を愛してるのか?」
「愛しています」
回答を間違えてしまえば、この男はあっさり死を選ぶだろうと思った。
「ルアーナ、結婚しよう」
「はい、魔王様」
「そこはオリヴェルと呼んでくれ」
「ごめんなさい、オリヴェル様」




