2謁見
私には自信があった。勇者パーティーを強化しないことと場合によっては魔王その人を強化してもいいと交渉するつもりだったのだ。複数人とエッチするよりただ一人とエッチする方が断然マシだ。魔王が既婚者だった場合強化の術をかける方向で交渉すればいいだろう。
案内してくれるコウモリのような翼の生えた人型の魔族に礼を言って謁見の間へと入った。
「はじめまして、魔王様。ウルリナ王国の聖女、ルアーナと申します」
魔界の礼儀作法は分からないのでとりあえず神殿で習った淑女の礼をしておく。
「オリヴェルだ。魔王と呼ばれている。楽にしてくれ」
玉座に座った男は美しかった。白磁の肌。艶やかな長い黒髪、人類にはあり得ない鮮やかなスカーレットの瞳。形のいい上がり眉に少し目尻の垂れた甘い目元、すっと通った鼻梁、薄い唇は緩やかに弧を描いている。
「さて、聖女よ。私に保護を願ったと聞いている。事情を説明してもらおうか」
「ルアーナとお呼びください、魔王様。私は国で勇者パーティーのメンバー全員と交合するよう命令されました」
「……私の知らぬ間に人間の貞操観念は随分と変化があったのだな」
「恐らく魔王様の知る貞操観念と変わっていません。ただ聖女が強化の術をかけるより効率的と判断したようです」
「それで逃げてきたと?」
「はい」
「なぜ魔界なのだ。人の国でもよいだろう」
「人の国では連れ戻される恐れがあります。そうなれば私は監禁凌辱の憂き目に遭うでしょう。ですが魔界ならまず並の人間は辿り着けません。そして魔王様の庇護を受ければ私の身の安全は保証されるでしょう。これは魔界側にもメリットがあります。今代の勇者パーティーは聖女の強化なしでやってくるのですから」
本当は魔王様にあなたを強化してもいいと言おうと思っていたがこんなに美しい男に「私を抱いてもいいですよ」なんて到底言えなかったのである。
「それから、勇者パーティー襲来の折には強化の術を魔界の皆様におかけします」
「魔界に与すると言うのか? 魔王は世界を滅ぼそうとしていると聞かされているのだろう?」
「勇者パーティーと交合せよと言われた時に私が拒んだ程度で滅ぶ世界なら滅んでしまえと思ったのです」
そう私が言い切ると魔王様はおかしそうに笑った。それから真顔になって私に問いかけた。
「ルアーナよ、お前は自分の事情を話して魔界で監禁凌辱の憂き目に遭うとは考えなかったのか」
あ、その発想はなかった。ウルリナ王国と魔界は戦争をしているけれど魔族に人間が犯されたという話は聞いたことがなかったのだ。
「その可能性は考えていなかったという顔だな。お前の事情は他言しない。お前も不用意に話すな。そうだな、勇者と気が合わなかったとでも言っておけ。私はお前を保護しよう」
「ありがとうございます、魔王様」
「城に住むといい。部屋は案内させよう」
気がつくと私は謁見の間の扉の前にいた。
「お部屋へご案内します。どうぞこちらへ」
先ほどとは違う人型の魔族の女性が声をかけてくれた。
「ありがとうございます。お世話になります」




