君の休日
日曜の午後。
窓の外は静かで、部屋の中もそれに倣うようにひっそりとしていた。
湊はソファへ横になりながら、スマホを手のひらで転がしていた。
特に誰かと話す予定もなく、どこかに出かける気力もなかった。
洗濯物は乾いたままハンガーにかけられたままで、昼ごはんはコンビニのおにぎりひとつ。
時計の針が、気だるく午後二時を指していた頃。
スマホがふるりと震える。
「……」
画面には、ひとこと。
『今日、なにしてた?』
送り主は、葵。
その短い文面を、湊は何度も見つめる。
それだけで、ほんの少しだけ、息がしやすくなる。
(別になんてことない、ただの一文なのに)
返事は打たなかった。
何をしていたか、話すような特別なことはない。
だけど、そのメッセージを削除する気にも、未読スルーする気にもならなかった。
しばらくのあいだ、ただ画面を眺めている。
既読マークがついていないことに、少し安心する。
(……葵は、きっと何も言わない)
返信がなくても、たぶんそのまま流してくれる。
それがまた、都合よくて、優しくて、ずるい。
スマホを伏せて、湊は目を閉じた。
なにかを言葉にしないまま過ごす日曜は、静かで、すこしあたたかかった。