月曜の声
目覚ましの音で起きた朝。
カーテンの隙間から差し込む光がやけに眩しく感じられて、湊は顔をしかめながらベッドの上で伸びをした。
月曜日。
一週間の始まり。気だるくて、少し憂鬱な日。
スマホの通知欄に、小さなバッジがひとつ。
眠たげな目をこすりながら開くと、「葵」からの音声メッセージが届いていた。
>『おはよー。湊、起きてるか? 起きてなかったら、三回深呼吸してから立ち上がれよ。じゃないと、倒れるぞ。』
小さく笑ってしまう。
でも再生してしまったことを後悔するように、湊はすぐに画面を閉じた。
音声って、ずるいな。
言葉よりも、その声の調子とか、間とかが、全部伝わってしまう。
朝の静けさに、残響みたいに葵の声が残る。
(……昨日の夜、電話してきたと思ったら、今度はこれかよ)
悪態をつきながら、湊はキッチンへ向かう。
インスタントのコーヒーを淹れて、ぼんやりと湯気を眺める。
流し台の端に、まだ洗っていないマグカップが置いてあった。
使わないまま、置きっぱなしになっている。
(……洗わなきゃな)
けれど、その手は動かなかった。
ただ、カップの縁を指でなぞる。
「……ほんと、声とか、置いてくのやめろよな」
言葉にしてみても、自分でも意味が分からない。
けれど、そう呟いてしまうほどには、
月曜の朝の静けさが、今日はひどくさみしく感じられた。