表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】同居人は異世界の女神さま!? 男に逃げられ、金も尽き、運まで消えたら、女神に振り回された件について  作者: yururitohikari


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/96

とうとう

 日曜のお昼すぎ。

 弘前公園の桜に想いを馳せたり、異世界から来た迷子のエピソードに軽く衝撃を受けたり──。


 いろいろあったが、とりあえず今は静かで平和な部屋に、再びゆるやかな時間が流れていた。


 外から聞こえるのは、車の走る音と、どこかの子どもの笑い声。

 まさに、よくある休日の午後。


 「……そういえばさ、朝ごはん、まだ食べてないよね?」

 お腹がグーと鳴った気がして、杏はそっとレイネに声をかけた。

 「はい」

 素直にうなずくレイネ。


 異世界の住人でも、お腹は空くらしい。


 杏は立ち上がって、冷蔵庫を開けてみる。

 中には、卵、豆腐、ネギ──以上。

 「あら……びっくりするほど何もないわね」

 このところ、まともに買い物してなかったのを思い出す。


 気合を入れて料理できる食材もない。


 なので──。


 「えっと、目玉焼きでいい?」

 振り返ってレイネに聞いてみる。

 「めだまやき……? なんの?」

 レイネが首をかしげる。


 「え?あ、(とり)の」

 鶏以外何があるというのだろうと杏は思う。

 「ああ、(とり)ですか……なるほど……」

 なんか納得しつつあるレイネを横目に、杏はフライパンの用意に向かった。


 卵を冷蔵庫から取り出し、フライパンを温め始めた杏。

 よし、今日も平和にベーコンエッグ──と思った矢先。

 背後から、少し緊張感のある声が飛んできた。


 「あーちゃん」

 また改まった口調。さっき観光雑誌のときもそうだった。

 振り返ると、レイネが妙に真剣な表情で立っている。

 「ど、どうしたの?」


 「えっと……()()、どこにありますか?」

 「あれ?」

 と言われてもだな…杏は困った。


 「その……はばかり…」

 「はば……? かり……?」

 杏は首を傾げた。聞いたことのない言葉だ。


 「せっちん?」

 「せ、せっちんって…なに?」

 杏は、その言葉が何を意味するのか全く分からなかった。

 レイネの表情に、微かな焦りが浮かぶ。


 言葉が出てこないもどかしさを感じているのか、手をぱたぱた振りながら、

  「あれれ?えっと、かわや」

 「かわや?」

 杏は、その言葉を聞いて、ようやくピンとくるものがあった。

 頭の中で、「御用だ!御用だ!」と同心が走り回る。


 「あ、かわや!水戸黄門とかで言う…あれか。トイレのことね」彼女は指を鳴らした。

 「トイレならそこよ。ほら、そこの扉」

 「あ、トイレ。そう言うんですね」

 レイネはホッとした顔を見せた。


 「あの扉の向こうだよ。どうぞどうぞ」

 杏が指差すと、レイネは首をかしげながら、ゆっくりと扉へと歩いていく。


 ──そして、扉を開けた瞬間。


 レイネが振り返る。

 「……これ、どうやって使うのですか?」

 眉をひそめる。


 「え?まさか……レイネの世界、トイレ無いの!?」

 「ありますけど……これはちょっと違います」

 レイネはトイレの中を覗き込みながら、言葉を探すように続けた。


 「私の世界では、トイレはもっと建物の端っこの方で、薄暗くて、外に近くて……こんなに明るくて、綺麗で、密閉された空間ではありません」

 「うーん、確かにマンションの水洗トイレって、異世界的には最先端よね……」


 「あの、できれば正しい使い方を教えていただけると……」

 「あ、うん。いいよ、今すぐ、超真面目にレクチャーするね」


 こうして、日曜昼下がりの住宅街にて──

 異世界人にトイレの使い方講座・初級編が開講されることとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ