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【第一部完結】同居人は異世界の女神さま!? 男に逃げられ、金も尽き、運まで消えたら、女神に振り回された件について  作者: yururitohikari


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静かな警告。あるいは、女神構文


 「じゃぁ、今日はありがとう」

 ファミレスを出るとケンジはまた笑顔を見せてくる。


 雨はまだ止んでいない。

 杏が傘をさし終わるまで、ケンジは傘をかしげる。

 些細な瞬間も濡れないように気遣う仕草。

 そんなことを自然にやってのける。


 これが、”誰に対しても”でなければ……


 杏は、”まだ続いていたのかな”とうっすら思う。


 「また金ができたら、ちょっとずつでも返したい。迷惑だろうけど……」

 「銀行振込でいいよ」

 手間だろうし、と思って杏は言った。


 「そうだけど、それだと杏に会える理由が無くなるだろ」

 歩き出すケンジは、言わせんな恥ずかしいと言って笑った。


 返す言葉が出てこなかった。

 「どうした、杏?」

 ケンジが近寄ってくる。

 「なんかあったのか?」

 「なんでもない」

 杏は小さく答えた。


 「なんでもないわけ、ないんだろ」

 「大丈夫だよ、ケンジも大人になったんだなって思って」

 そう言って、歩き出す。

 「……俺さ、ダメ男でさ、金もないけどさ、話は聞ける」

 もう一軒行こう、ケンジはそう言うと杏の手を取った。


 「大丈夫。もう終わってるって分かってるから」

 そう付け加えたケンジの言葉に、杏の警戒心はほどけていた。

 「彼女に悪いよ」

 最後の抵抗のつもりだったが、ケンジは言った。

 「この前()()()。いまは仕事に集中」


 * * *


 そこは、ブラウンを基調にしたバーだった。

 間接照明で落ち着いた雰囲気。

 杏とケンジはカウンターの端の席に並んで座る。


 「あの頃みたいに、甘いのはもう飲まないよ」

 カルーアミルクだっけ?とケンジが言うと、杏はそう答えた。

 

 ふたりはジントニックを注文する。


 お揃いだねとケンジは言うと「悩みは、仕事のことだろ」と指摘した。

 そう。これからのキャリアの事。

 それも悩みの種だ。


 「なんでわかるの?」

 「そりゃ杏はいつだって、仕事については真剣だろ」

 少し小ばかにしたようにケンジの口元は笑い、そして言った。

 「俺は元カレだぜ」


 バーテンがふたりのジントニックを置いて去る。

 これ、言ってみたかったんだ。

 ケンジは前置きをすると、グラスを持つ。

 「再開に、乾杯!」

 「なにそれ」

 杏は冷たく言いながらもグラスを合わせる。 


 「──で、その仕事の件て?」

 真剣な眼差しでケンジは見つめてくる。

 「転職とかね……」

 杏は促されるように、転職の誘いに乗れなかったことを皮切りに話し始めた。


 ケンジは相づちを打つ。


 やがてキャリアが見えない事から、いつしかユリが結婚することを素直に喜べない、そんな話になっていった。

 「杏もいろいろあったんだな……」

 ケンジは静かに言った。

 

 「でも、ちゃんと『おめでとう』って言えたんだろう──やっぱり、そこは杏らしいよ。相手のことをちゃんと考えてる」

 ケンジは、また笑顔を見せる。

 「タケシと別れたのは、良いことと言っていいのかわからないけど、でもまたこうして杏に会えたから俺に取っちゃラッキーかな」

 そう言ったケンジは2杯目を注文する。

  

 「別れてみて、俺はやっぱり杏の大切さに気付いたんだよ……」

 じっとケンジは目を見つめてくる。

 「大丈夫。杏なら……」

 彼の手が優しく指先に触れ、包み込むように握られる。


 暖かさと心地よさが湧き上がってくる。


 薄暗い店内。

 端の席で、他の客の視線は気にならない。


 目の前にはじっと見つめるケンジ。


 彼のもう片方の手が、顎のラインを静かに撫でてくる。

 やがて爪の先が、唇をくすぐる。


 誰かに必要と求められる感覚。


 ──だめ


 そう思う一方で理性はドキドキと高鳴る心臓の音にかき消される。

 近づくケンジの唇。


 杏は目を閉じた。



 ──ブルル


 杏のスマホが震え、メッセージ受信を知らせる。


 はっと我に返ると、あわててスマホを開いた。


 レイネからだ。

 

 ”ご×ωo今気づレ丶T=oサイサイ丿ライフ〃動画ゐ〒〒、テヘヘ”


 ──ブルル


 ”すぅ様の詩、言霊の戯れ多すぎて尊死…

 我も吉田さんごっこを欲す…!

 同窓会という輪は存在せぬ故、合コンなる儀式にて草草ww”


 ──ブルル


 ”あと今日はね〜〜♪♪

 あーちゃんの大好きな♪♪ビーフシチューだよ〜♪♪

 寒いから体もポカポカあったまるし♪♪

 お野菜もた〜っぷり♪♪♪入れて栄養満点よ〜♪♪

 明日も元気にがんばろ〜ねっ♪♪♪♪♪


 ギャル?

 ネラー?

 おばさん構文?

 ……なんなのよこの子!

 

 「ごめんっ。帰らなきゃ!」

 財布に入っているお金を置き、逃げるようにその場を去った。


 ──ブルル


 今度は何?


 ”気をつけて帰って来てねとは、無事に帰って来て欲しいということなんですね。”


 小泉構文かーい!!





--------補足--------

”ご×ωo今気づレ丶T=oサイサイ丿ライフ〃動画ゐ〒〒、テヘヘ”

ごめん。今気づいた。サイサイ※のライブ動画が見てた、てへへ


※サイサイ=サイレント・サイレン

日本のガールズバンド


 ”すぅ様の詩、言霊の戯れ多すぎて尊死…

 我も吉田さんごっこを欲す…!

 同窓会という輪は存在せぬ故、合コンなる儀式にて草草ww”

サイレントサイレンのすう(吉田菫:Vo,Gt)の歌詞は、言葉遊びが多くて好き。

私も『吉田さん※』ごっごしてみたい。

同窓会はできないから、合コンとかかな。笑


※サイレント・サイレンの『吉田さん』という曲。

吉田菫(Vo.Gt)が同窓会に参加して、いろいろ失敗するのをコミカルに描いている。


小泉構文

政治家、小泉進次郎がたまにいう”同じことを2回繰り返す”独特の構文。

重要そうに思えるが、中身は特に無いと思われる。



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