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【第一部完結】同居人は異世界の女神さま!? 男に逃げられ、金も尽き、運まで消えたら、女神に振り回された件について  作者: yururitohikari


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【改変の天秤】鏡の中の女神と、消える日常


 当初、レイネはウッキウキだった。

 そうかー、血で治すんだなーという致命的な勘違いを抱えたまま献血。

 

 血を分け合い、お互いを救う。

 なんて素敵な世界なんでしょう。

 健康ならすぐにできる社会参加。

 素晴らしい。

 むはー。

 異世界に帰ったら再現してやるんだ。

 うん。

 ちょっとはこの世界で役に立ったぞ。


 足取り軽く、杏の元に戻る。


 杏は「おーがたはね」と血液型診断の話をし始める。

 それを聞きながら、血液型が性格にあらわれる話は、合点が行かなかった。

 

 ──ここまで物理的というか、科学というものに満たされているのに、血液が性格に影響すると信じているのは、一体なぜなのか。しかも誰にでも当てはまる事を言っているではないか。


 そうレイネは思った。

 しかし、嬉しそうに話す杏を見ていると、疑問を口にするのはやめた。

 

 ──ステレオタイプ化して、他人を理解したという幻想でもないときっと不安に満たされてしまうのではないかな......などと考えているときだった。

 

 「なんのこと?血が霊薬? え、なに?」

 杏は、レイネの表情以上に『理解不能』な表情だった。


 そして、レイネは文字通り血の気が引いた。



* * *



あああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああ


 レイネの脳内は嘆きに溢れていた。


 しまった。

 うかつだった。

 また勢いだけで、やってしまった。


 やばい。やばい。やばい。


 ちょっと考えればわかるじゃないか。

 さんざん、本やテレビで学んだのに。

 この世界は、医学が発達している。

 霊薬なんて、そんな非科学的で属人的な物はない。


 血液型診断に科学性が無いなんて思う以前の問題だ。

 『血』で病気やケガを治す世界では無いのだ。


 このままでは、まずい。

 この世界の誰かに、血を分けてしまう……


 献血前に時間を戻す?

 タイヤのパンク修理みたいに、一部分だけではすまない。

 全次元に干渉しないと、辻褄が合わなくなる。


 そんな大規模にやったら──やばい。

 奴等に見つかる……

 時間を止めたぐらいなら、世界は同じ時間軸で進むから気付かれないが、これは確実にバレる……。


 ”──まったく。お嬢様は、時間が戻せるからって、いつも無策ですよね”

 護衛の呆れた声が思い出される。


 ぐぬぬ。これは怒られる事案ではないか。


 うう。どうしよう。

 

 「……ネ……レイネ?」

 杏に声を掛けられ、はっとする。

 「あーちゃん……」

 「大丈夫?」

 杏が心配そうな声で、尋ねてくる。


 「貧血が今頃来たみたい。少し休憩すれば大丈夫」

 レイネは、そう答えつつ、今すぐ時間を巻き戻すことをあきらめた。


 ──一体、何人に輸血されてしまうんだ……?


 やばい。冷静に考えないと。

 ごめん。あーちゃん、ちょっと独りになりたい。


 レイネは立ち上がる。

 「ごめん。トイレ行ってくる」


 大丈夫?一緒に行くよ。

 立ち上がろうとしてきた杏の肩を抑えて、そのまま座らせる。

 「大丈夫だってば。慣れなかっただけだし」

 「あ。うん…」

 杏は座ったままレイネを見た。

 そんな杏を置いて、足早にトイレへ向かった。



 鏡の前でレイネはうなだれる。

 今更、血を返せなんて言えない──どんなギャグだこれ。


 どうしよう。

 あの量が一人に使われたら?──老衰死寸前だったとしても、若返りと長寿化……1,000年ぐらいか……

 まず過ぎるー!


 ひとりじゃなくて、何人かに使われたらどうなる?

 重症者が翌日、陽キャ・パリピ・ウェーイ状態な光景が、量産じゃないですか!

 まずいよー、困ったよー。


 あ、でも。

 成分が分かれているから、フル効果ではないはず。

 とはいえ、それも希望的観測。

 どう使われ、どんな効果が出るか……だめだ、分からないことが多すぎる。


 未来予知を使うにも、対象が曖昧過ぎる。


 どうしようーレイネのばかー。


 ああもう、様子見だ。

 少なくとも影響が分かる程度の時間を過ごす。

 新幹線の中であと一か月ぐらいと言ったが、何かしら言い訳をするほかないか……


 何も無ければ、そのまま元の世界に帰ればいい。

 何かあったら、献血よりも前の世界線に戻す。


 戻したら、その世界線は無くなる。

 なかったことになるから、私以外だれも知らない歴史だ。


 あーちゃんの記憶にも残らない。

 そもそもその世界線が無いのだから。


 ──あれ?

 そうすると、これから先の時間は、場合により無かったことになる。


 それで良いんだっけ?

 いや、むしろ今の世界線がおかしいんじゃないか?

 ちょっとのつもりだったのにこの世界に長居して、あーちゃんを振り回している。

 異世界人の私がいる、この世界線が間違っている……。


 時間を戻すなら、私が来る前が正しいのでは?

 そうか、戻すならあの時か。


 私がこの世界に居ない世界線が正しい──。

 それが本来、杏が過ごす時間軸だ……


 ひとまず今は「霊薬」の部分だけ、杏には忘れてもらおう。


 そう結論付けたレイネはもう一度鏡を見る。

 思ったよりひどい表情だ。

 

 振り回してごめんね。

 鏡を見直して、表情を作る。


 その時レイネは、解決策が訪れたと思っていた。




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