電化製品はご自身で
レイネは、朝の光を背に、床にちょこんと座っている。
まるで瞑想でもしているかのように、静かに目を閉じている。
杏は、そーっと距離を詰めていきながら声をかけた。
「……レ、レイネさん?」
「おはようございます」
にっこり笑うその顔に、昨晩の非現実すぎるやり取りが一気にフラッシュバックする。
冷蔵庫から出現
異世界から来ました
観光旅行が目的です
「……って、そういえばさ」杏は頭をぽりぽりかきながら、現実に戻った頭で言った。
「昨日、“一緒に観光いこう”って話したけど……その前にやらなきゃいけないこと、山積みなんだよね。部屋の片付けとか」
正直、部屋の中はタケシ関連の痕跡がそこかしこに残っていて、落ち着かないにもほどがある状態だ。
杏が片付けモードに入ろうとした、そのとき──
「片付けなら、もう終わってますよ?」
「は?」
「ブラウニーちゃんがやってくれましたから」
「誰!?」
レイネはひらっと手を振り、部屋の奥を指差す。
杏はゆっくりと振り返り、そして凍りついた。
……部屋が、ピッカピカになっている。
昨日まで放置してたダンボールはきれいに折りたたまれ、床に転がっていた服や書類もきちんと分類されて収納されている。
「いやいやいや、ちょっと待って!?なにこれ!?私が寝てる間に誰が!?」
「ブラウニーちゃんですって」
「だから誰!?それ!!妖精!?」
「うん。家事妖精」
レイネは満足げに頷き続けた。
「お掃除と収納が得意なんです。あ、でも私の世界にないものは扱えないです。そこは頑張ってください」
指さす先は、いくつかのスマホの充電ケーブルなど電化製品がまとめられている。
「え、なにその部分的に役立つファンタジー精霊……」
杏はしばらく口をパクパクさせた後、力なくつぶやいた。
「ありがとう……いや、ありがとうなんだけどさ……現実、どうなってんの?」
「あーちゃんが昨日すごく疲れていたから、代わりにやっておきました。これで、安心してお出かけできますね!」
「お、おぉう……そうだね、うん……そうなる、のか……」




