世界線、引いちゃいました
日曜日の朝。
目覚まし時計も鳴ってないのに、杏はふと目を覚ました。
「……あれ、もう朝?」
カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の床をやさしく照らしている。
壁の時計に目をやると、10時を過ぎていた。
「やば……寝坊した……!」
体が条件反射で跳ね起きる。
だが、起きた瞬間──ふと、視界の隅に違和感がよぎった。
何かが、部屋の端っこを横切ったような……人影?
「……気のせいだよね?」
カーテンをしゃっと開けて部屋を明るくすると、昨日の記憶がふと脳裏に蘇る。
──冷蔵庫から女の子が出てきた。
いやいやいやいや、あるわけがない。
失恋のストレスと疲労で、頭がバグってたに違いない。
「夢だよね、うん……たぶん、夢だと思いたい」
ひとまずリビングへ。
そして、足が止まる。
「……夢じゃ、ない……」
床にちょこんと座っていたのは、銀色の長髪に白いガウンを纏った、美しい少女だった。
そう。あの“冷蔵庫の中から出てきた女の子”が、しっかりとリビングにいたのである。
日差しを浴びて、ガウンはシルクのようにやわらかく光り、まるでアニメの神官キャラが降臨したかのような神々しさ。
「……ほんとに、いた……」
杏は目をこすってみた。
それでも消えない。夢じゃない。現実だ。
つまり──。
「冷蔵庫の中から美少女が出てくる世界線、私引いちゃったってこと!?」




