換金大作戦!!
「これがあれば、生活費も旅行代もぜ〜んぶ賄えるよねっ! いえーい!」
レイネが掲げる金の延べ棒。
そう、これさえあれば。
これを換金し、『円』に変えれば相当まかなえるだろう。
──円に、変える?
あ、そうか。
買い取ってもらわなきゃいけないのか、杏は黄金郷へと導くその金塊を見て改めて思う。
このままじゃ、ただのピカピカした文鎮だな、うふふ。
杏はスマホを手に取り、駅前にある『なんでも買取カトリ』を検索。
金の買取もやってるのは知っていた。
さっそく電話してみることにした。
プルルルル……。
「お電話ありがとうございます。なんでも買取カトリです!」
あっさり繋がった。
杏は深呼吸して、電話口の店員に尋ねる。
「あの、金の延べ棒を買い取っていただきたくて……」
「はい、承っております! 店頭にお持ちいただければ査定いたしますよ。ご本人確認書類だけお忘れなく。あと注意点がいくつか──」
ふむふむ、とメモをとりながら話を聞いていく杏。
どうやら注意点とは、所得税がかかること、それとは別に手数料がかかるとの事。
「手数料は、量によって変わりますので──」と店員は続ける。
「差し支えなければ、大きさとか重量を教えていただけますでしょうか?」
にこやかな声で店員は続けた「ピアスとか指輪でしょうか?」
「えっと、延べ棒で……合計30キロくらい?」
「…………えっ?」
一瞬、通話が凍った。
「30キロ……ですか?」
電話の向こうの店員が、目を見開いてるのが分かる。
絶対、そう。
「お、お客様。それでしたら、入手証明書や、過去の取引証明書などをお持ちいただけますか? 最近、密輸の件もありまして……」やや震える店員の声。
「入手証明……取引……?」
異世界から、入手証明書…?
取引証明書……?密輸?
え?
スマホのマイクを慌ててミュートにし、杏はリビングのレイネに小声で問いかけた。
「ねぇ、レイネ。あの金塊さ…『入手証明書』とか、ある?『取引履歴』とかさ?」
「にゅうしゅ……?とりひき……?なんですか、それ?」
レイネは、ちょこんと首を傾げた。
ないのね。
うん、ですよね〜!!!
わかんないよね、だって、こないだブラを知ったばかりだもの、うふふ……
電話を再びミュート解除して、杏は精一杯冷静を装う。
「あの、持ってない場合って……やっぱり無理ですか?」
「いえ、必ずしも無理というわけではないんですが……詳しく事情を伺わせていただく場合がございます」
──もうムリ。
「わ、分かりました。いったん確認して、また連絡します」
通話を切った瞬間、杏はしばらくスマホを見つめたままフリーズした。
目の前にあるのは、キラッキラに輝く、30キログラムの純金。
「……文鎮じゃん」
現実という名の重力に、杏は静かに押し潰されていった。




