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【第一部完結】同居人は異世界の女神さま!? 男に逃げられ、金も尽き、運まで消えたら、女神に振り回された件について  作者: yururitohikari


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あ。目玉焼きって。

 「トイレでテンションぶち上がる人、初めて見たかも……」

 杏はつぶやきながら、キッチンでベーコンと卵をじゅうっと焼く。


 バターの香りがふわっと広がり、食欲が呼び覚まされていく。


 トースターから取り出したパンに、焼きたてのベーコンと卵をのせて。

 即席ベーコンエッグトーストが完成。

 「できたよー、簡単だけど朝昼兼用!」

 杏は、トイレ観察中のレイネに声をかける。


 「これが……“目玉焼き”?」

 レイネはベーコンエッグトーストを見るなり、首を傾げる。

 「そうそう。焼いた卵を、そう呼ぶの。ほら、黄身が目玉っぽいでしょ?」

 レイネは、じーっとそれを見つめる。


 「……あの、あーちゃん?」

 「うん?」

 「さっき、“(とり)の目玉を焼く”って……」

 「うん、言ったね」

 「だからてっきり──鳥の目玉かと」

 「そっちかーい!」


 杏はトーストを持つ手をテーブルに突っ伏した。

 「いや、そりゃ“目玉”って言うけどさ、実物の目玉じゃないよ!?どこの魔族料理よそれ!」

 そんなの食べるの?と杏が聞くと、食べるわけないじゃないですか、とレイネが答える。

 「だって、“目玉”って言うから、普通に眼球って思うじゃないですか。()()()()()()()()()って」

 「それもう“鳥の目焼き”じゃん!猟奇すぎるからやめて!」


 ふたりでわははと笑いながら、トーストにかぶりつく。

 レイネは、一口食べた瞬間、ふっと目を見開いた。

 

 ──もぐもぐ。


 そして──


 「おいしい……!泣きそう」

 ぽろっと、涙がこぼれた。

 「え、えぇ!?泣いてる!?なに!?辛かったの!?」

 「ううん、違うんです……こんな美味しいもの、はじめてで……」

 杏はぽかんとしたまま、レイネの顔を見つめる。


 トースト片手に、涙ぽろぽろ。

 「……ありがとう、あーちゃん」

 「……どういたしまして」


 たかがベーコンエッグ、されどベーコンエッグ。

 誰かに「おいしい」って笑顔で言われたの、いつぶりだろう。

 元カレ達は、料理なんてほぼ無言で食べて、言うことと言えば味が薄いだったっけ。


 ベーコンエッグで、そこまで褒められるとは。


 「あ、そうだ。レイネ、さっき“せっちん”とか言ってたけど、よくそんな日本語知ってたね?」

 「いえ、正確にいうと知らないです。翻訳魔法を使ってるので、私の言葉があーちゃんに“日本語っぽく”聞こえてるだけなんです」


 「え、魔法なの!? じゃあさっきまでの会話全部!?」

 「はい。でも、よく似た概念がないと正確には訳されないんです。だから“トイレ”の説明は、ちょっと不安定でした」


 「トイレよりもその翻訳魔法の方がすごくない!?」

 「いえいえ、トイレの方がすごいです。給排水設備があって、魔力じゃないのに動くって凄くないですか?」

 「……文明、負けたわ」


 杏は笑いながら、冷たいルイボスティーを一口飲んだ。

 

 異世界とのギャップに戸惑いつつも、心はなんだかあったかい。

 ──この日、杏はふと思った。

 この子との暮らし、案外悪くないかもしれない。

数ある作品の中、読んでいただき、ありがとうございます。

応援や「いいね」、★評価、感想などなど、いただけると泣いて喜びます。


それでは──

読んでくれたあなたに、異世界級の幸運が訪れますように!

また次話でお会いしましょう!

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