個人企画に参加してみた ①と②それと③ +バンダナコミック01作品
古代菊池文明を解放せしもの
私の名は菊池明子。明らかにする子と書いて明子。27歳独身‥‥職業はしがない調査員をしている。遺跡調査とか、地方に伝わる民謡などの情報を集め、資料や文献の整合性を調べ報告書にするのが仕事。
地道に現場に足を運んで、地域の方から話を聞き出すだけ。簡単な仕事に思われ馬鹿にされる。
でもね、この仕事はこ誤解を受けやすいのよ。地方の辺鄙な田舎の集落にやってくるスーツ姿の人間は、大半は詐欺師と思って間違いない……うん、確かにそんな気はするのを否定出来ない。
騙されやすい年配の方に端的に分かりやすく説明するより、スーツを着た知らない人を見たら石を投げろ! の方が覚えやすい。
黒髪を後ろで束ね、身長170センチの私はパッと見て性別の判断し難い自覚はある。話を聞きたくて畑仕事をするご老人に近づこうとして、村中に追われた事がある。
────調査員の足舐めるなって言いたい。でも速さで勝っても駄目だった。集団で落ち武者狩りをされているような、タフなしつこさには敵わないからだ。
テレビをつけると鬼ごっこや追跡者の番組が人気のようだ。でもあんな子供だましの娯楽の緊張感なんて笑い話にもならないわ。
鍬や鎌で追いかけられるのは、慣れたし怖くないの。最近は田舎にも充電式のハンディ草刈り機や、伐採用の電動ノコギリが売りつけられていて、ガチで恐いの。隠れて潜んでいる茂みごとブィーーーンッと、機械音を鳴らして囲まれてしまえば普通に死ねる。
在庫処分の本当は捨て値の高級羽毛布団や太陽光発電を売りつけろよ! ────‥‥オホンッ、失言でした。
必要性の高いものはしっかり購入する危険な集落に、女の身一つで乗り込む大変さが伝わればそれでいいの。
そうした地で調査員として仕事をするのには、地元の役所から顔役を紹介してもらったり、地域密着の介護コミュニティ施設にまず話を通す。
そして今回の調査は唐突に流行し始めた菊池病なる思染病について、発生原因を掴み報告しろと、菊池隊長から命令を受けた。
隊長も私も菊池だからね。いわれなき菊池への妄想や暴言の被害者だ。仕事にも影響するので早目に解決に乗り出したわけ。
私が訪れたのは、とある町。菊池の発祥の地ではなく、発症させている地。その菊池の地にやって来て思った。
「な、なんじゃこりゃあ〜〜〜っ?!」
とある町のとある家の庭に、どデカい龍のようなうねる大木が生えていた。明らかにわかる、コレが原因だと。大量に咲く崑崙花。それに大木の根元の工事跡には‥‥歪んで先の見えない洞窟があった。
「これは、神話の大木? この洞窟はどこに通じているのかしら」
私は菊池明子。だからわかる、同じ菊池として、これが菊池に関わる何かだと言う事に。一応他人の敷地内の為、外から覗き見るだけでも不審者扱いされてもおかしくない。話が聞きたい。ただ関われば戻れない気がした。
「中に入ってみてもいいよ」
後ろから急に声をかけられて、私はビックリして飛び退いた。
「驚かせてしまってごめんね。私は菊池繁美、貴女も菊池なのでしょう?」
彼女‥‥菊池繁美は、ここで門番を務めているそうだ。庭いじりをしていた住人が、眠っていた古代菊池文明の扉を開いてしまったらしい。
封印されていたあらゆる菊池が飛び出し、新たなる菊池時代が始まったという。この地は菊池文明世界へ入るための門として、多くの菊池と、菊池になりたいものが訪れるようだ。
「その‥‥この庭の持ち主はどうなったのですか?」
菊池同士の気軽さが許されているようで、怖いのに話しかけやすかった。
「菊池を創造せしもの様なら、なんで菊池〜っと、ぼやきながら普通に過ごされていますよ」
変わり果てた庭を見て、普通って何だろうと思わなくはない。飄々と日常を暮らせる胆力が、一層人々を熱狂させるのかもしれない。
菊池の流行の発生源はひとまず掴めたが、菊池世界を探索するには、私一人では手に負えない。
幸い菊池を創造せしものにより、菊池祭りなるお祭りが開かれている。菊池の話を聞くのならば彼らから直接話を読み聞かせてもらうのが良いだろう。
私は門番を務める菊池繁美に礼を言い、報告のために一旦戻る事にした。提出する報告書には、次のように記入した。
「これは菊池を愛するもの達により力を得て、思わぬ発展をした希望の光あふれる世界である」
私は調査員として菊池明子として失格だ。菊池世界への扉は開かれているのに、語る術を持たない。
この報告を見て興味を持った方は、この世に溢れた菊池を探索する事をおすすめする。私が見たままを伝えるよりも、ドキドキ、ワクワクする世界が語られている。
私が菊池世界へ訪れた話を報告書に上げるよりも、より深く菊池を知る事が出来ると思う。
この門の先に何があるのか、いつか明かされる時が来るのかもしれない。
未来を知るのは創造せしものか、菊池を愛するものたちか、いまはまだ現実のこの世界に答えは出ていない。
お読みいただきありがとうございます。菊池祭り参加作品となります。
若干、菊池の門の話の続き的な部分が含まれております。あと親しくないのに企画主様いじりをした事をお詫び申し上げます。