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代償
ジルは多分、元の気性は柔らかかった。
優しくて素直で明るい、人懐っこい性格をしていた。
だが、生まれた瞬間から奴隷として生きることを強いられ、幼少期から理不尽に怒鳴られ、殴られ、食事や財を奪い取られ、精神や肉体など、あらゆる側面で安全を脅かされている内に外側も内側も変わってしまった。
鋭くなった瞳の奥は糞尿の混ぜ込まれた泥のように濁りきり、目に映るものすべてを嫌悪して疑うようになった。
他者を殺し、奪ってでも生きようとする醜い強さを身に着けた。
元から持ってきた適応力と忍耐力を使って新たな特質を得ていく在り方はまるで進化だ。
暴力的に自分を作り変えて、過酷な環境を生きながらえた。
その代償とは何だったのだろうか。
ジルはベッドの上で泣きながら、タルトに買われた日から今日までを振り返っていた。