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ハッピーファミリー

操作室ではヘンリーとクリスティーナが台本を印刷していた。

「8部全部揃った。クリスティーナ、お前は演劇とか好きなのか?」

「演劇より映画のほうが好きだわ。」

「俺はそう言う芸術とかあまり興味ないな。スポーツ観戦してた方がずっと楽しいな。ケイジさんって、確かラグビーが得意だったよな?」

「もしかしてその情報、情報部から仕入れた情報でしょ?」 

クリスティーナがヘンリーに聞いた。

「あんたの考えてることは大体検討ついてるのよ。」

「クリスティーナ、只者じゃないな。」

「只者じゃない連中がこの会社に集まるのよ。」

「俺のその一人か。」

「あんたは身体能力が只者じゃないけど、アホさ加減も只者じゃないわね。」

「どういう意味だよ!」

クリスティーナがヘンリーをからかった。

「それよりあんたが情報部から情報を仕入れようとするなんて前のあんたらしくないわね。」

「ケイジさんのことなら何でも知りたいからな。」

「情報部も教えてくれないケイジの機密情報、私は知ってるわ。情報部でも話したのはたった一人だけよ。」

「もしかしてああ見えて、ケイジさんって女たらしとか?」

「それはベンでしょ。あいつがそんな面倒なこと会社で起こさないわ。」

「それとも会社の金を横領とか?」

「それは無理よ。会計部はセキュリティーだけではなくて、護身術も身につけてる社員ばかりだから。そんなことしたら奴らとそのロボット達に張り倒されるわ。」

会計部もゲーム推進部の社員と張り合えるくらい強い。

「それなら何なんだよ!もしかして物凄い闇を抱えてるとか?」

「さあ、どうだか。」

「勿体ぶらないでケイジさんのこと教えてくれよ。」

「教えてやらないわ。あんた子供みたいな奴ね。ジェイから電話ね。」

クリスティーナはジェイからの電話に出る。

「クリスティーナ、今度の会議の出欠確認するけど出れるか?」

「その会議はパスよ。私の部下一人でゲーム運営させるわけにはいかないから。」

「お前ら最初はどうなるかと思ったけど、案外良いコンビなんじゃないか?」

「どこがよ!あんたの所の入江太一と組んだほうが最強コンビよ。」

「アイツのことは嫌いなのか?」

「最初はイライラしかしなかったけど、今は消えて欲しいレベルじゃないわ。」

「消えて欲しいってお前相変わらず怖いこと言うな。」

「これがいつとの私よ。それで会議は何するのよ。」

「新しく建てるゲーム会場についてだ。」

「どこに出来るか知ってるの?」

「知ってるが、今のところお前とか他の社員に共有することは出来ない。」

「東南アジアとかに会場があったら面白そうね。」

ジェイとの会話は終わる。

「太一は元気にしてるのか?」

「聞いてないわ。」

ヘンリーは太一のことを考えていた。

「もっと特訓が必要だな。」

「もう少しで雷の壁を作れます。」

「まずは電気量を増やさないとな。」

太一は機械の操作はすぐに覚えた。実技的な猛特訓をジェイから受けていた。

「少しは良くなったな。」

太一はめげることは無かった。

「しまった。」

「またコーヒーこぼしたのね。今すぐ掃除して。」

「台本が汚れた。コピーし直さ無いと。面倒いな。」

「待って!その台本そのままで良いのよ。あんたのドジはいつも私を困らせるけど、プレイヤー達を振り回す長所でもあるの。テイスティングのワインのことも間接的にプレイヤー達を振り回したのよ。あんたには無意識的にプレイヤー達を振り回す才能があるのよ。」

「皮肉か?」

「そうよ。悪いかしら?」

台本を手にとって置いた。

「とにかくあんな奴らの為に新しい台本を作るなんて紙の無駄よ。それなら報告書をまとめるなり、やる事があるわ。」

「企画書見たが、こんなゲーム考える社員がいるんだな。」

「このゲームは第6期生が全員で考えたゲームよ。新人研修でこのゲームを使うのははじめてのことね。」

プレイヤー達は退屈そうに待っていた。

「俺達忘れられてんじゃねーのか?」

「どう考えても俺達のことを振り回してるだけだろ。」

モニターがつく。

「クズども、元気にしてたかしら?また刺激的なゲームでたくさん虐げられるのを楽しみにしてたんじゃないのかしら?」

「そんな事ねーよ!変な性癖持ってるのはゲームマスターくらいなんだよ。」

「否定しようが、虐げられるのが好きってことにしておくわ。これからゲームを発表する。第4ゲームは!」

プレイヤー達の間で緊張感が走る。クリスティーナが無言の間どんなゲームが行われるのか考えていた。

「第4ゲームはハッピー・ファミリーよ。」

「なんだそのゲームは…」

プレイヤー達はどんなゲームか検討がつかなかった。

「ルールを説明するわ。今から手元に台本を配るわ。その台本を見ながら演技して貰うのよ。最後まで上手く役を演じられたらこのゲームは終了よ。ただし、間違えるたびにチョークが飛ぶから。ちゃんと演技が出来るまでずっと演技して貰うから。説明は以上よ。」

プレイヤー達は台本を開き、内容を確認する。

「何か私のだけ汚れてるな。」

ゴードンが言った。

「ゲームマスター、家族の話って言うのは分かったが、具体的な配役はどうするんだ?」

「それはヘンリーが決めてくれるわ。配役は旦那役、妻役、旦那の愛人役、息子役、ナレーター、木の役だ。」

ヘンリーが配役を考えていた。

「新入り、配役はどうなんだ?」

「まだ考え中だ。待っててくれ。」

「遅いぞ!早くしろ!」

数分後ヘンリーは配役を決め終わった。

「待たせたな!配役を発表する。」

「あんた喋り方がケイジらしくなってきたわね。」

クリスティーナがヘンリーに言った。

「旦那役はジム・ジョンソン。妻役はマット・ファビアン。」

「は?何で俺が妻の役なんだよ!」

マットはキレて暴れ回った。

「マット、落ち着け!」

ピーターとゴードンが止めに入った。 

「面白すぎる。マットが女の役とか見てみたいな。」

ティムが言った。

「どんな感じだろうな。おかしくて笑いが止まらないな。」

ラファエルはものすごく大きな声で笑った。

「笑うな!」

「次に旦那の愛人役だ。愛人役はラファエル・ウォーターハウスに演じてもらう。」

「それってゲイの役か?」

「女の役だ。」

「さっき笑ってたようだが、これでお前も俺のことを笑えないだろ?」

マットが言った。

「次に息子役はゴードン・ワシントンにやってもらう。」

「ガキの役かよ。」

ゴードンは不満を漏らした。

「ナレーターはフェリシア・ファーマンだ。」

「ナレーターか。引き受けるわ。」

「木の役はピーター・ギリアム、ティム・ウィリアムズ、レジーナ・インズの3人だ。」

「木の役って何するの?」

レジーナが聞く。

「木の役は木としての役割を果たせば良い。」

ヘンリーは言った。

「そんな簡単な役なのね。」

「1日台本を確認する時間をもうける。台本を必ず目を通しておくように。」

クリスティーナはそう言って、モニターから消えた。

「何で俺が妻の役なんだよ!レジーナ変わってくれ!」

「嫌よ。」

「フェリシアお前も変われ!」

「女を散々苦しめたあんたにはちょうど良い役なんじゃない?」

フェリシアはマットをご馬鹿にした。

「何だと!女のくせに。」

「君のこと少しは見直そうと思ったけど、何も変わってないね。」

ジムは言葉を吐き捨てた。

「ゲームマスター、配役を変えてくれ!」

クリスティーナとヘンリーがモニターにうつる。

「却下。一度決めた配役はどんな理由があろうと変えることは出来ないのよ。配役にケチをつけた罰として、10分間砂煙の刑よ。」

クリスティーナは機械を操作した。会場では砂煙がプレイヤー達を襲った。

「何で俺たちまで巻き込まれなきゃいけないんだよ!」

「可哀想ね。マットの為に全員犠牲になっちゃうなんて。」

クリスティーナは可哀想だなんて本当は思っていない。無様に罰を受けるプレイヤー達を虫けらのように見ていた。

「何するんだよ!」

「これ以上ケチをつける気かしら?それともあんた達マゾなの?永遠に罰を受けたいのかしら?この状況を抜け出すにはゲームを通過して貰わなければならないのよ。これがあんた達に必然の運命なんだから。」

クリスティーナとヘンリーはモニターから消えた。

「クソ!」

「俺もこんな女の役やりたくねーよ!」

マットとラファエルは台本を投げた。

「うるさいな!気が散る!台本読んでるだろ!邪魔するな!」

ジムは二人を見て言った。

「俺はゲームを円滑に進めることしか考えてない。その邪魔をするな。」

「俺と役を変われ!」

「ゲームマスターの命令は絶対だ。話を聞いてなかったのか?それとも本当の馬鹿なのか?」

「何だと?もういっぺん言ってみろ!」

「ゲームマスターの言ったことも理解出来ない馬鹿なのかって聞いたんだよ。これで満足か?」

プレイヤー達の中ではジムのように台本に目を通すプレイヤーとそうではないプレイヤーに分かれた。

ゲームがはじまった。

「ある日、3人の家族が暮らしていた。これは3人の家族の物語。」

「ナレーター、話すスピードを落として。やり直しよ。」

クリスティーナはフェリシアに言った。

「台本にそんな事書いてないんだけど。」

「良いからやり直しなさい。」

「ある日、3人の家族が暮らしていた。これは3人の家族の物語。」

「スティーブ!会いたかった。」

「ストップ!その格好でその役やるわけ?スティーブの妻役の格好に着替えなさい。」

「何で俺があんな格好しなきゃいけないんだよ。」

「ラファエル、ゴードン、あんたも着替えなさい。」

3人はそれぞれ個室に入って着替えた。

「何だよこれ。」

「中々面白いもの見たな。案外似合ってるじゃないか?」

他のプレイヤー達はマットをからかった。

「うるせー!笑うな!」

「何をしてるの?マット、あんたマット・カサビアンになってるのよ。あなたはもうスティーブの妻なのよ。」

クリスティーナがモニター越しで言った。

「スティーブ、会いたかった。」

「ただセリフを読んでるの?スティーブに抱きつきなさい!あなたはジュリアなのよ。」

マットはジムに抱きつく。

「ジム・ジョンソン、何嫌な顔してるのかしら?スティーブは妻のジュリアを好きなのよ。スティーブはそんな旦那じゃないのよ。やり直し。」

クリスティーナが言った。

「スティーブ、会いたかった。」

マットはジムに抱きつく。そしてキスをする。

「セリフは良いけど、キスシーンだけやり直し。嫌そうな顔しないで。」

もう一度二人はキスをした。

「俺達、会えたの子供の時だったな。遠くの州に引っ越したからもう二度と会えないかと思った。まさか大人になって再会するなんて。覚えてくれたんだな。ジュリア。」

ジムはマットの頭を撫でる。

「あなたを見ていたら先月離婚した旦那に興味が無くなった。だから別れて今はあなただけの女。」

「それは良かったな。」

「二人は海外で感動の再会を果たした。自然の流れで二人は恋仲になり、結婚した。数年後二人の間にはウォルターと言う息子が生まれた。」

「ウォルター、起きなさい!ご飯が出来てるのよ!」

「ストップ。今度はウォルターの前では母親らしくしないと女と母親を使い分けないと。」

「うるせーよ!オカマみたいなことをさせるな!新入り出て来い!」

「台本にまたケチをつけたようね。最初からやり直しよ!」

「ふざけるなよ!」

「どんなに台本が途中でも台本にケチをつける行為は最初からやり直しよ。ハッピー・ファミリーのルールよ。」

「畜生!」

最初からやり直しになったので、ジムはイライラした。

「俺達、会えたの子供の時だったな。遠くの州に引っ越したからもう二度と会えないかと思った。まさか大人になって再会するなんて。覚えてくれたんだな。ジュリア。」

「ジム・ジョンソン。イライラしてるのかしら?これは演技なのよ。あんたの感情じゃなくて役者としての感情を優先しなさい。このゲームプレイ中は役者になるきることよ。」

しばらく台本が進む。

「ウォルター!どこにいるの?」

ゴードンはサイズの合わない子供服を着ていた。

「ウォルター!見つけたわ。ここに隠れてたのね。」

「ママ、パパ大好き。」

近づくゴードンをマットとラファエルが抱きしめる。

「家族3人はとても幸せな家庭生活を送っていた。収入にも問題なくて、家庭環境にも問題ない誰もが理想とする家庭だった。ある女と出会うまでは。」

ナレーターのフェリシアは話すスピードをクリスティーナ好みにした為、止められる事はなかった。

「あるパーティーの会場で愛人になるケイトと出会う。ケイトはスティーブに声をかけた。」

ラファエルがついにケイト役として演技を始める。

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