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Drug Star  作者: 赤羽学
2/15

第2話 『彼女』

 突然だが、読者諸君は『虐待』をご存知だろうか。育児放棄、家庭内暴力、性暴力、経済的虐待……と。その種類は多岐にわたる。そして、そのような虐待が起こる原因とは一体なんなのであろうか。

 ある時は『別れた旦那、女房がちらつく』から。ある時は『言うことを聞かない』から。ある時は『酒に溺れてた』から。またある時は『都合の良い財布代わり』だから、と。その理由もまた、多岐にわたる。


 人間とは。いかなる行動にも理由があり、大体は自分にとってプラス()となる理由の為に行動する。いじめであっても虐待であっても、もっと言えばビジネスであっても同じだ。『理由なき』ということはまずありえない。


 今回の一件。何故起こったのだろうか。そして、何故彼女が裁かれた()のであろうか。



 それを知っているのは────────────────。




━━━━━━━━━━━━━━━




 暗闇の中。幼き少女が絵本を抱いていた。母親から貰った、大切な一冊だ。何度も何度も読み返してしまっているせいでページの端は折れ、随分と汚れてしまったが。それでも大切な宝物なのだ。

 暗闇と言っても。ここは外ではない。彼女の家の中─────厳密に言えば押入れの中だ。実の母親から躾のため()に入れられている。彼女はそれをしっかり理解している。悪いのは自分なのだ。彼女はたしかに母親の眠りを妨げてしまったのだ。

 母親は夜に働きに出る。だから昼間に寝なければならない。それを、いくら声を抑えていたとは言え大切な絵本を朗読()していたのであれば、怒られても仕方がないのだ。

 こうやっていい子にしていれば、以前のような優しい母親に戻ってくれると。無条件に、無根拠に信じていた。


 母親は優しい女性(ひと)だった。少女に父親の記憶は無い。名前も顔も知らない。少女には母親が全てだった。


 母親もまた、男に捨てられ自分に残ったのは我が子のみとなった。自身が虐待された過去から、この()には寂しい思いも辛い思いもさせまいと誓い、自身の理想の母親になるために我が子に愛情を注いだ。

 幼い子供を持つ母親の稼ぎなど大したものにはならない。故に生活は困窮を極め、貧しい生活が二人を苦しめた。周りの子供がおもちゃを、服を、おやつを、次々買い与えられるのを見ながらも。それでもけっして我儘を言わず、毎日笑顔でいる娘を不憫に思った母親は娘を書店に連れて行った。高価な服やおもちゃは買ってあげられなくとも、せめて絵本ぐらいは。そう思ってのことだった。

 娘が選んだ本には、『おかあさんありがとうだいすき』と書かれていた。それはありきたりではあるが、母を愛するこどもの視点と言葉で描かれた絵本だった。彼女は泣きながら娘を抱きしめ、娘もまた母親を抱きしめた。以来、少女にとっても母親にとってもこの絵本は宝物となった。


 そしてその日からおよそ一ヶ月後。彼女は勤め先を変えた。このままでは娘に苦しい思いをさせてしまう。それは嫌だった。だから、敬遠していた夜の仕事()で働くと決めた。娘との生活リズムはズレてしまうが、これも娘の為だった。

 彼女は店の中で母である自分を殺し、(オンナ)を演じた。客の付きは良く、収入も激変した。最初の内は母である自分より女である自分でいる時間が辛かったが、すぐに慣れた。


 そして────段々女に戻れる時間に快感を覚え始め、母親に戻るのが億劫になってきた。


 そんなある日だった。男が現れた。彼女は男に一目惚れし、男もまた彼女に恋をした。二人は会ったその日に愛し合い、夜を共にした。彼女は男に娘のことを隠した。知られれば拒絶されるかもしれない。その考えが、彼女に母親(じぶん)を捨てさせた。以来、彼女にとって娘は邪魔になった。彼女の愛は娘にではなく男に向けられた。


 

 男に愛される為に綺麗でなければならない。食事や睡眠は自分を優先させ娘は後回しにした。

 

 男に愛される為に美しくなければならない。娘の為だった筈の貯蓄は全て自分の為に使った。


 男に愛される為に女でなければならない。彼女はついに。完全に娘を見捨てた。



 食事も風呂も洗濯も掃除も、全てを自分でやらせた。料理は砂時計の扱い方と熱湯の出し方だけを教えた。風呂は水道代が勿体ないからと濡らしたタオルで体を拭くように言いつけた。洗濯はしなくていいから同じものを着ていろと教えた。掃除は箒と雑巾を渡し、静かにやるように教えた。言うことを聞かない時や泣いた時は身体に教えた。彼女に、娘に向ける愛情など無かった。

 可能であれば今すぐにでも外に捨ててこようとさえ考えた。だがそれでは警察沙汰になってしまう。そうなれば彼に拒絶される。もう会ってもらえなくなる。その恐怖心だけが彼女に娘の滞在を許させていた。


 娘はそんな母親の心情など知らず、素直に言うことを聞いた。朝は母親の不在のまま一人でカップラーメンを食べて家を出て。学校から帰ったら、家にいる母親を起こさないよう静かに箒と雑巾で掃除をする。服を脱いで濡らしたタオルで身体を拭いて、そのタオルを明日また使う為にそのまま干す。先程脱いだ服を着てカップラーメンを食べて、母親を起こさないように自分はソファーで寝る。もしも母親を怒らせてしまったときは押入れで寝ることになる。ベランダに出されたまま夜を明かしたこともあった。母親は今、仕事が大変だから少し怖いだけなのだと。もう少ししたら昔のように戻れると。そう願って、そう信じて。今日も彼女は6歳の身体に鞭を打って、耐えていた。

 そんな彼女が今一番幸せを感じるのは母親と会話ができた時だ。母親の機嫌がいいと自分に向かって『いってきます』を言ってくれる。どれだけ深い眠りの中でもその声を聞くと目が覚める。笑顔で『いってらっしゃい』を言う。今日こそは笑顔で返してくれると信じて。しかし、母親は決まってこちらを見ようとしない。これも自分が悪いのだろう。後悔と反省をしながらも、しかし彼女は例えこの一言でも会話ができた喜びで()涙を流す。そんな時に彼女が思うのはいつだって同じだった。






 ────────きっと。きっと、もうすぐ。おかあさんがかえってきてくれる。






 彼女は今日も。いつかの日を夢見て、押入れで眠る。




━━━━━━━━━━━━━━━




 少女の瞳に、獲物が映る。いつものように缶を傾け、中身を一気に喉へ流し込む。一息吐いて目を閉じる。口を閉じたまま全身に走る快感と衝動を感じ取って鼻から声を漏らす。

 彼女はそのまま跳躍し目的の場所へ向かう。風を受けながらそっと呟く。


「……ヒーローターイムッ………♡」


 歪に欠けた月だけが彼女を見ていた。




━━━━━━━━━━━━━━━




 彼女()がソレに気付いたのは、偶然だった。深い眠りの中、視線を感じた。奇妙な話ではあるのだが、眠りながらにして扉の外から『見られている』ことを感じたのだ。それでいてこの家の住人ではない()ことも何故かわかった。しかし恐怖は感じなかった。どこか、暖かいような気すらした。


「はろ~えぶりばでぃ~♡ 突撃! 突然隣の正義の味方のドラッグスターのお時間がやって参りましたァ~♡」


 聞き覚えがない声。何かを言おうとしたが声が出ない。間髪入れずに新たに声がかかる。


「扉の向こうのキュートでセクシーなイノセントガール、聞こえてるかぁい? 聞こえていたら返事をしておくれぇ♡ 聞こえて無ければ…………返事をしておくれぇ♡」


 返事をしようにも声が出ない。掠れた呼吸が喉から漏れて小さく『ぁ』とだけ音になった。


「お! 聞こえてるねぇ! よ~しよしよし、マイクテストの時間は終わりだ。で、だ。今お嬢さんはとっても苦しんでるようねぇ……。わかる、わかるよォ……! 乙女はいくつになっても恋をしたいもの! 今あなたは愛に飢えてるのよッ!」


 聞き覚えの無い声の主に戸惑いながらもなんとか言葉を返そうとする。しかしどうしても声が出てこない。もどかしい気持ちが喉を通って『ぅ』とだけ発した。


「そしてセニョリータはこうも思っている……『このままじゃイケない……! 変わらなきゃ……!』っと。愛するものの為にこうまで思えるのが乙女の特権ってやつサ。恥じることはないわ! だからここは一つ……アタシを信じてみない? 変わってみない? 今の自分から……♡」


 ようやく声を出す。思いを言葉にする。


「変われる……?」


 声の主が扉の向こうから興奮した様子で捲し立てる。


「変われるとも! アタシに任せなさい! 今の苦しみから、解放して、あ・げ・る♡」


 その言葉を。信じてみようと思った。無条件に。無根拠に。


「どうすれば……」


 彼女がそこまで言った時、扉が開けられた。彼女の目の前には────奇天烈な恰好をした少女が、ドラッグスターがいた。


「アタシに……身体を預けて……ゆっくりと……力を、抜きな……♡」






 ドラッグスターのその両手が。苦しみからの解放を望む────────






 幼きその首に伸びた。




━━━━━━━━━━━━━━━




 今日も出勤だ。そう思うと瞼は重いままであり、ベッドから出るのを躊躇させる。しかし。もしかしたら今日も彼が来てくれるかもしれないと思うと身体に活力が漲り、目が覚める。

 娘を持ってから久しく失っていたこの感情。世間は自分が『母親』であることに優しくない。まして父親がいないとなればなおさら。

 前後の事情も知らぬご意見番たちがこぞって自分を非難する。自分はあらゆる贅沢を捨て娘の為に尽くしてきたのに、誰にも評価されない、認められない。

 

 報われない努力ほど、評価されない苦労ほど、耐えられないものはない。


 彼女はそんな重責に潰された一人である。彼女が全てを捨て、楽になろうとしたことは誰にも責めることはできない。彼女もまた被害者なのだ。

 しかし、それは決して|虐待を正当化しても良い理由にはならない《・》のだ。


 彼女自身もそれは理解している。自分が今何をしているのか。娘にどんな思いをさせているのか。そして、このままではいけないことも。

 しかし、もう後戻りはできないのだ。今更取ってつけたような母親像を演じても意味はない。昔のように戻ることはできない。

 そして彼女は娘と向き合うことを放棄し、自分の為だけに生きることにした。それが、彼女の『心』を救う唯一の方法だった。

 そんなことを思ったからだろう。いつ以来か。娘の顔を見て『いってきます』を言おうと思った。ほんの気まぐれだ。なんとなく。そんな気分になっただけ。

 彼女が今寝ている押入れの前に立ち、声をかける。


「……いってきます」


 違和感を抱いたのはすぐだった。自分の娘はどれだけ深い眠りの中にいようとこの声で飛び起きる。そして笑顔で()いってらっしゃいと返す。筈なのだ。無視などありえない。聞こえないワケがない。

 たまに娘に向き合ってみようとすればこれだ。イラ立ちが脳をかき回す。


「……テメー。無視してんじゃねェぞ?」


 いつもならここで立ち去っていた。だが、今日はなぜかこのまま扉を開けてみようと思った。どうしても顔を見てやろうと思った。意地でも。


 ────しかし彼女の目に映ったのは。


「────ッ!?」


 絶叫。到底そこにあるモノ()が娘だとは、娘だったとは思いたくないほどの凄惨な画。


 彼女が娘の顔を見ようと気まぐれを起こした時────既に娘はこの世から去っていた。




━━━━━━━━━━━━━━━




 世間に衝撃を与えた『母子家庭、一人娘惨殺事件』の真相に迫る。(中略)読者諸君の耳にも新しいこの事件。警察への独自調査によると、現場が荒らされていないこと、また盗品などが無いことから強盗によるものではなく、あくまで犯人は殺人を目的として被害者宅に侵入、犯行に及んだとみられる。また犯人は素手で犯行に及んだとみられているが、奇妙なことに被害者の首は人間の握力を超えた力で握り潰されており、変形した骨や肉が内部で破裂したことがわかっている。犯行時刻と見られる時間帯、被害者の母親が廊下を挟んだ寝室にいたが全く気付かなかったとのこと。警察は被害者の身体からは犯行とは無関係と思われる無数の打撲痕や、長く風呂に入ってなかったであろう痕跡などもみられ、虐待による殺害も視野に捜査中とのこと。母親は夜の店で働いていたことなどもわかってきている。

 幼い少女を家において、自分は夜の町の住人になるなど。なんとも母親の風上にも置けない人物である。挙句に、娘がどんなに助けを求めても起きもせずぐうぐうと眠っていたとは。隣近所の住人の声によると彼女は日頃からヒステリックな一面を見せており、いつかはこうなるんじゃないかと誰しも思っていたようだ。未来ある幼き少女がこのような形でこの世を去らねばならなくなった理由を、我々は徹底的に調査していく所存だ。(以下割愛)




───事件発生より一週間後に発行された雑誌より抜粋───




━━━━━━━━━━━━━━━




 男がいた。彼はやり手のビジネスマンとして周りからも一目置かれ、出世街道を躍進中の身だ。彼には妻も子供もいる。しかし、彼は家庭に愛情を持ってなどいなかった。親同士の都合で結婚させられ、事後報告の様に子持ちであることを告白された。彼は全く妻を愛していなかったし、子供も好きじゃなかった。

 もし連れ子が女の子であったなら、こうはなってなかったかもしれない。なぜならば彼は重度の小児性愛者であり、彼は相手に連れ子がいると聞いて一瞬薄汚れた考えを持ったからだ。しかし紹介された少年を見て断念した。これでは意味がない。

 そこで、ツテ()を利用して子持ちの女を探させた。子供の年齢、写真で見る容姿も男の眼鏡に適った少女の母親は、水商売で生活していた。

 彼女が自分に惚れているのがわかった。今会ったばかりなのになんと醜悪なのだと心の中で毒突きながらも、自分の欲望のために辛抱する。一晩共にし、向こうから子持ちであることを告げるのを待ったがダメだった。これではこちらから問うわけにもいかない。彼女が自分を信用し、自分から打ち明けてくるまで辛抱強く待つことにした。彼は、家にいる妻にも子供にも、店にいる愛人にも愛情を向けず。いつか犯せるであろう幼き少女に劣情を向けていた。

 そんなある日だった。テレビのニュースで見た、自分の獲物の写真。聞こえる情報は。自分の欲が、もう叶わぬことを告げていた。

 これまでに使った金や時間が全て無駄になったことを知った男は家の中で暴れ回った。妻の制止も振りほどき、泣きわめく息子を足蹴にして、破壊と暴力の限りを尽くして、家を飛び出した。

 男が冷静さを取り戻した時には全てが遅かった。これからどうするかを考えて街を彷徨っていた男は、歩道橋の上で背中に声をかけられる。


「…………もしかしてあなたなの……?」


 聞き覚えのある声に振り向くと。そこには、みすぼらしく変わり果てたかつての愛人が立っていた。


「あぁ……あなただけだわ。私を拒絶しないのは……。お願い。私と結婚して。私を抱いて。独りにしないで。もう私にはあなたしかいないの。あなただけなの。お願い。」

「……! 私に近寄るな売女めッ! 私は君の娘が目当てだったのだ! あの子を犯し、貪る為に君に近づいたのだ! もう君は用済みなのだよ!」

「そうよ……。そうなの。私の娘はもういないわ。だからもうコブ付きじゃないの。ねぇ。いいでしょう?結婚してよ。ねえ」

「ふざけるな! 誰が君の様な────。」 






「お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い」

 





「ヒィ!!!!!」


 男と女の影が重なり合い。足をもつれさせた男に(もた)れるように女が覆いかぶさり。


 そのまま手すりを越えて落下した。




━━━━━━━━━━━━━━━




 母親は、初めに自らの手で娘との関係を断ち切り、母親である自分を殺した。


 娘はそんな母親に育てられて尚、母を愛した。そしてそれは母親を苦しめた。


 男はそんな二人の事情など知りもせず興味も抱かず、ただ少女を犯すためだけに行動した。


 一人の女が母である自分を殺し、一人の少女の存在が母親の心を殺し、一人の男の劣情が女と男を殺した。


 少女(ドラッグスター)は幼き命を生き地獄から解放し、最期の恋の為になにもかもを捨てた女の心に裁きを与え、歪んだ想いと欲望を持った男は女を使って殺した。


 今回の一件。何故起こったのだろうか。そして、何故彼女が裁かれた()のであろうか。






 それを知っているのは────────────────読者諸君だけである。

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