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planetarian 前日譚 第六夜 ほしのとゆめみ 後編  作者: オーガスフロンティア
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第四十〇話 ほしのゆめみと申します。(19)星空の下で

CAPELⅡ(ほしのゆめみ)の練習解説が始まり、夕闇から夜空へ・・・。

 《まず、最初に皆様にお願いがございます。お手持ちのスマートフォンは、着信音や振動音が他の皆様のご迷惑となりますので、電源をお切りになるか、サイレントモードにするようお願い申し上げます。また、上映中の飲食もお控えください。それから、照明が落ちていきますと、家事や、お仕事、家事でお疲れの方でしょうか。気持ちよくなって、そのまま眠ってしまう方が多くいらっしゃいます。そのまま、静かに眠っていただくことは問題ないのですが、いびきをかいてしまう方もいらっしゃいます。ほかのお客様にご迷惑を掛けてしまうようであれば、お声を掛けさせていただきますので、あらかじめご了承ください。全てのお客様が心地よく過ごせるよう、ご協力お願い申し上げます。》

 CAPELⅡが上映前の注意事項についての説明を始めると、さっきまで騒いでいた猫女のミオは、息をひそめたように大人しくなった。

 他人の上映・・・、彼女にとっては他人の演技であるのだが、きっと他人の上演を尊重しているのだろう。

 大人しいというよりも、観察している・・・、見守っている・・・、そんな雰囲気だ。

 ドームの内側の地平にあたる部分には、花菱デパート屋上から見えるであろう町のビルや、遠くの山のシルエットが映し出されている。

 そしてよく見ると、一番星の金星がうっすら浮かび上がり始めていた。

 《はい。それでは皆さま。大変お待たせしました。》

 スポット照明が、操作盤の前に立っているCAPELⅡを照らし、静かなBGMが流れ始めた。

 《ただいまから、花菱プラネタリウム、五月の上映を始めさせていただきます。わたくし解説員のCAPELⅡと申します。40分の短い星空の旅ですけれども、お付き合いいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。》

 既に康太は眠気に襲われて、うつらうつらしていた。まあ、せっかくの休みなんだし、実際疲れもたまっていたのだろう。

 《まず始めに、わたくしの自己紹介をさせていただきます。わたくしは、当プラネタリウムに派遣されたロボットです。お客様の案内や、解説員として配備されました。わたくしが自己学習を開始してから、まだ11か月ですので、不自然な点や、皆さまに不愉快にさせることがあるかもしれません。もし、そのような事がございましたら、お帰りの際にアンケートにお答えいただくと、これからの改善にお役に立てさせていただきますので、ご遠慮なくお申し付けください。》

 CAPELⅡは、少し明るさが落ちた照明の下で、お辞儀をした。緑色に光る瞳が浮き上がり始めている。

 《それから、当プラネタリウムを投影する機械を説明させていただきます。》

 スポットライトが、中央に据えられた巨大なカミキリムシのような鉄アレーを照らした。

 《こちらは、1960年に、ドイツのカールツァイス・イエナ社で製作された光学式投影機です。今も多くの人の手によって支えられて使われています。簡単に説明しますと、この片側の大きな球体は南半球、もう片方は北半球で見える星空を再現できるように設計されています。そして、この中に組み込まれた仕掛けを動かすことで、時を遡ったり、遠い未来の星空を再現することができます。例えば10万年前の星空を再現することができるんですね。》

 天文好きのミミの方は、(なるほど、へえ・・・。うんうん。)と聞いていた。

 星野は、(よく調べたもんだなぁ・・・。)と感心していた。

 相変わらずミオは黙って聞いている。

 《今は、2034年5月1日18時30分に合わせてあります。》

 初解説となる5月1日に設定しているようだ。

 そしてスポットライトの明かりが徐々に消えていき、鉄アレーの巨大な虫の姿は、その球体の表面から小さな光の点を発しながら、夕闇の中に黒いシルエットとなった。

 《さあ、それでは、お星さまが見えるように、徐々に時間を進めていきますね。》

 天球に映し出されていたオレンジ色の風景が、だんだんと暗くなって、見え始めた星の点がゆっくりと回転を始めた。

 同時にBGMがなくなり、電車が遠くで走る音が聞こえ始める。

 そして、正面にあった時刻表が21:00まで進んだところで止まった。

 《さあ、これが、本日の浜松市の夜空です。でも、町の照明が星の光に被っていて、ちょっと分かりづらいですよね。》

 半球ドームの下から、暗闇に比べて眩しい光が照らされている。

 《都市化が進んだ現代では、町の照明が夜空を照らして、星のような小さな光は大変見えにくくなっています。では、ここで東の空、つまり皆さんから見て左の方をご覧ください。》

 東の空の下から、一点の光が西へ向けて動き始めた。

 《お気づきでしょうか。光の点が動いていますね。これはいったい何でしょうか。お判りになられる方がいらっしゃいましたら、その方はとっても宇宙の事が好きな方ですね。もしお判りでしたら、そーっと手を上げてみてください。》

 星野は、CAPELⅡの話に調子を合わせて手を上げた。

 《はい。ありがとうございます、一名の方が手を上げて下さいました。この光の点が分かる方は、とおっても、宇宙のことが好きな方ですね。今日は、その方に負けないように解説しなければなりませんね。》

 星野は上げていた手をゆっくりと降ろした。

 《それでは正解をお伝えしましょう。はい、こちらでぇす。》

 CAPELⅡがそう言うと、ドーム正面の南の空に、宇宙中継ステーションが大きく映し出された。大きな球体をコアにして、筒状のユニットが幾つも連結されており、何枚もの太陽光パネルがそれを囲んでいる。

 《どうでしたか?正解だったでしょうか。こちらは、ただいま活躍中の国際宇宙中継ステーションです。アメリカ、日本、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、オーストラリアが参加して建設されました。いつも50名くらいの宇宙飛行士、科学者、整備作業員が暮らしています。》

 ドームの内側には、船内で暮らす人達の様子や、顔が映し出される。

 《今では、月に向かう宇宙船の中継点としても活躍しています。小さな点の光のように見えますが、とても大きい宇宙船なので、地上から望遠鏡でその姿を見ることができます。大きな宇宙船は、この他にも中国、ロシア、中東の国の人達が作った宇宙船もあるんですねぇ。》

 もう一つの宇宙中継ステーションの外観が映し出され、しばらくして、すーっとその姿が消えていくと、浜松市の明るい夜空に戻った。

 《はい。今日は皆さんに、星空についてお話する日です。ですが、町の明かりがお星様を隠してしまっています。本日は、町の明かりを落として、ずっと昔の人達が見ていた夜空を再現してみましょう。》

 とCAPELⅡが言うと、下から照らし出されていた光がだんだんと落ちていき、電車の音が消え、ビルのシルエットもなくなっていった。

 代わりに、ドームの中は、いよいよ暗くなって、山々の形がうっすらと残り、木々のざわめきと虫の声が聞こえる。半球の内側は、たくさんの星々で満たされ、天の川が西の空にぼんやりと現れた。

 《いかがでしょうか。現在でも町の光が届かない山奥へ行けば、このような星空を見ることができます。もしかしたら皆さんの中に、見たことがある人がいるかもしれませんね。》

 康太は、虫たちの鳴き声と、CAPELⅡの優しい語り口に、すっかり姿勢を崩して熟睡している。


プラネタリウムの解説考えるの大変です・・・。(泣)

知らないことが多すぎるし、ある程度の組み立ても大変です。

星の知識が豊富だったら、マシンガンのように打ち込むんだろうなぁ・・・。

話しは変わりますが、昨年、家庭用のプラネタリウムを買いました。

星空を投影する原板が、あまり良いものが無いのが玉にきずなのですが、虫の音とかBGMを流すことができます。それをヒントにしています。

そもそも、暗くなって夜空を見ながら眠るのが、人間にとって自然のような気がします。

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