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planetarian 前日譚 第六夜 ほしのとゆめみ 後編  作者: オーガスフロンティア
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第三十八話 ほしのゆめみと申します。(17)CAPELⅡの自作

少女型アンドロイドは、康太が提供したデータを元に仮想空間で光学式投影機を自作する。

「さて・・・、早速取り掛かるか。あやめちゃん。」

 《はい。承知しました。では、ただいまから、頂戴したデータを元に、カールツァイス・イエナ社製光学式投影機ユニバーサル23シリーズの構築を始めます。アナログデータからの変換は全て終えておりますが、しばらくお待ちください。》

 CAPELⅡ(あやめ)が一礼して言うと、中央に据え付けられていた半球型のデジタル式投影機が、最初は色が消え、その後フレームが消え、〈消去完了。手数料1,020V-Yenヴィーエン〉の文字が表れて消え、無機質な床がむき出しになった。

 《構築を始めます。》

 すると今度は、〈構築完了に掛かる手数料は、自動構築では252,000V-Yenが必要です。お支払いなさいますか。〉と空中に表示が現れて自動音声が流れた。

 CAPELⅡが、

 《手動で構築するので支払いません。》

 と答えると、〈それではデータの構築利用のみ2000V-Yenを徴収します。よろしいですか?〉と、表示して自動音声が流れて、

 《はい。支払います。》

 と、答えると、〈ありがとうございます。〉と表示され、チャリーンと音がした。

 CAPELⅡがまぶたを閉じ、投影機を据え付ける場所に近づいて両手をかざすと、投影機の架台のアウトラインが線であらわれた。その線に沿って面が浮かび上がると、金属の輝きが着色され、架台が構築された。そのあとは、内部の機械や歯車、レンズなどが同じように見る見るうちに構築されていく。

「うわぁ、こりゃ凄いや。」

 康太は、CAPELⅡが組み上げていくデータの構築物に驚いて歓声を上げた。

 なぜなら、人間の手で、アナログデータを変換したデータで、この作業をやろうとすると恐ろしく時間がかかるからだ。例えばCADのようなデジタル上で作成されたデータであれば、変換ソフトで易々と構築することができるはずだったが、紙媒体のデータを取り込んで3次元データにし、仮想空間上で再現するまでのアナログな作業は、非常に手間が掛かった。しかし、CAPELⅡは自分の処理能力を存分に発揮し、このアナログ的な作業を猛烈なスピードで進めていた。傍目に見ていると、あまりにも涼し気な顔をして構築作業を進めているので、何でもないような作業をしているように見える。

 無論、彼女が苦しいと思うこともないわけだが・・・。


「さすがに速いな・・・。ポンコツAIのようなことも言われていたが、なに、賢いことには変わりないわな。」

 星野は、CAPELⅡのお手並みにすっかり感心していた。やはり、廉価版のAIが元になっていると言えども、AIの高速処理能力はたいしたものだ。おっとりして一見間が抜けているようだが、こういった大量の単純作業は人間には出来ない。

 《構築完了しました。》

 CAPELⅡは、最初は下にかざしていた手を、構築が進むにつれ徐々に上げていき、その作業が完了した今は、その手はすっかり上がりきって、投影機に向かって両手を大きく広げていた。

 紫色に着色された大きな怪物のように、その二つの球体は、そこはかとなく誇らしげで威風堂々としている。

「やあ、ウチの投影機とそっくりだ。」

 投影機の整備士である脇山康太は、CAPELⅡが作り出したその姿に満足した。

 ただ、新品同様でピカピカしており、脇山にはそれが気になった。

「CAPELⅡ、もう少し使い込んだ感じに出来ないかな。」

 と、CAPELⅡにお願いした。

 《承知しました。それでは、経年変化をシュミレーションし、変化を付けたいと思います。少し表面を曇らせて、部品の隙間に入り込んだ汚れを再現いたしますが、よろしいでしょうか。》

「うん、それでいいよ。」

 《承知しました。》

 CAPELⅡがそう言うと、キラキラ光っていた投影機の表面にくすみが入り、各部品の隙間には、黒い汚れが表現された。

「うん、これでいいよ。十分だ。」

 脇山は、満足げに答えた。

 《はい、ありがとうございます。それでは少し動かしてみます。》

 今度は、本体がゆっくりと回転し始めた。静かなモーター音まで再現している。

「へぇ~、こんな事も出来るんだね。ウチのよりはスムーズに動いてるかな。」

 《はい。もっと早く動かすこともできますよ。》

「いや、いいんだ。これでいい。うん、こん感じだね。」

 康太は、投影機に近づいて、ゆっくりと観察した。

「はは、さすが整備士だけあるな。あやめちゃんより、食いついているように見えるぞ。」

 星野は、少し離れたところから、言葉を投げかけた。

「いや、あはははは、うーん、職業病ですかね・・・、つい・・・。でも星野さん、実物を見るのと、仮想空間で見た時の印象って変わりますね。うん、面白いです。」

 さっきまで間の抜けた康太だったが、さすがに本職の仕事のこととなると顔つきが変わり、そちらに気が向いてしまうらしい。目の輝きが違う。

 機械と少女に弱い男子なんて、オタクの典型のような気もするが・・・。まあ、そんなものでしょう。

 光学式投影機は、CAPELⅡの操作で回転したり球体を倒したりしている。

 星野は、深い観客席に座って・・・、と言っても実際は自宅のソファなのだが、

「さて、構築が目的じゃないだろう。」

 と言った。

 CAPELⅡが

 《はい。それでは、ただいまから演習を始めたいと思います。》

 と言うと、康太は

「おっとっと。」

 と言って、投影機から離れ、観客席・・・自宅のソファに座った。

 CAPELⅡは、プラネタリウムの操作盤の前に立ち、演習を始めようとしていたその時だった。

「あのう・・・、中に入れさせてもらっても良いですか?」

 と、大扉の隙間から、女の人が顔をのぞかせた。


ストーリーとは全く関係ない話なのですが、今、名古屋市内に住んでいるので、浜松に行こうかどうか考え中です。浜名湖までは車で行って見たけど、ネタになりそうなものはなかったしなぁ・・・。そもそも原作は浜松市でもなんでもなかったわけで、いまいち共通点が見つからぬ。昨今は、アニメとロケーションを結びつける目論見が頻繁に行われているが、さすがに、らき☆すたほどにはならないですね。最近見た中で、製作者の方々がきちんと取材してるなって思ったのは、長崎市『色づく世界の明日から』と越谷市『小林さんちのメイドラゴン』がですね。あれくらい考え抜いていると、いいなって思います。ほかにもあるんでしょうけど、そんなにアニメ漬けにならないですから! ・・・続きます。

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