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チョコレート至上主義のこの世界で、持ち武器が「チョコスティック」の俺  作者: 鷺ノ宮修
永続氷河大国=モールスモール
9/9

ありがとう

走り回ったおかげか、ヴァローナはすぐに見つかった

家をから出るときは飛び出るように出て行ったが、今はトボトボと雪に狭まれながら歩いている


「ヴァローナ、外は寒い、戻ろう」

吹き荒れる雪の怒号に負けない声でボルドは語りかける


「....」

ヴァローナの足が止まる


「爺さんが心配している....」


「心配してるのはお店の経営でしょ...」

足に積もった雪に吐き掛けるように答える



「お前だって頭の隅では分かってるはずだろ、爺さんの事情くらい」

ボルドは直球で攻めた


「....」

直球で攻めすぎたか答えは帰ってこなかった



「爺さんはお前のお父さんで、お前のお母さんの夫で、そんで...お前の言う通り店の経営者だ」


「そう、非情な経営者ね」

ヴァローナは都合が良いとこだけ切り取った



「爺さんにはお前を育てる義務がある、お前のためだったら何でもする、店の方針を変えることも、お母さんとの約束を結果的に破ることも....」


「ボルドさんには...ゆずれないものってある?」

逆にヴァローナが切り返す


「ゆずれないものか...昔はあったが、今はないかな」

遠い昔の記憶がほんの少しよみがえる


「私は、お母さんのプラリネが好き、お母さんのプラリネをお父さんと作るのが好き、プラリネを美味しそうに食べるお客さんの顔が好き」

ボルドから期待していた答えが返ってこなかったので、声色を強めて返答する


「そうか...」

ボルドはチョコ売り場で駄々をこねる子供を見るような目でヴァローナを見つめていた


「もし、それがなくなってしまうのなら、見れなくなってしまうなら、あんな店、なくなってしまえばいい!!」























                       パチーン!


ボルドにとって、この行動はいかがなものだろうと考えさせるものだったが、爺さんの立場を考えると、いい年とったヴァローナのことを考えると、手は動いていた



雪にさらされ赤くなった頬に衝撃が走る。

衝撃の次に痛みが走り、次に熱が伝わり、最後には虚しさが残った

叩かれて、怒ればよかったのだろうか、しかしどうしてか、叩かれて当然だと思える自分も頭の中に存在していたのが、悔しかった



「お前はまだ何も分かっちゃいない、母親の思いも、爺さんの苦しみも」


「ボルドさんみたいに大人になれれば、よかったのかな」


「..........」

ボルドはこの問に対する答えを未だに持ち合わせていなかった



「でも、私はやっぱりゆずれない...、今日は友達の家に行くから、お父さんにはそう言っておいて」


「分かった」


「それじゃぁ、ありがとねボルドさん」


その言葉は、ボルドにとっては寒い中追いかけてきてくれてありがとうという意味にしかほぼ捉えることができなかった


もし、ボルドに叩かれていなければ、家に帰っていたかもしれない

叩かれて、逆に吹っ切れた、家に帰らない決意をくれた、だからの「ありがとう」



そんな言葉を残して、彼女は白い雪に包まれ消えていった

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