チョコスティックですが、なにか?
キキーと車が間一髪のところで、止まった。
「あっぶねー、ってなんだこの人数?」
10人程が車の前に立ちはだかっていた。人相はほぼ全員悪く、武装していた。
「うわー、ボルドなんて運転してんのさ!?、ボンボンショコラでも食べて酔ってたんじゃないの?」
「うるせー、仕事中にアルコールなんか摂らないっての」
と、この状況を楽しんでいるか、マーブルがちゃちゃをいれた。
「それよりボルドさん、目の前の腰を抜かしているおじいさんに誤ってきた方がよいのではないのでしょうか?」
さすがに人を轢きかけたのだから、誤りにいこうと思ったボルドは、
「あぁ、そうだな、ちょっくら謝罪してくるわ」と言って、車を出た。
「いやー、すみません。ちょっとばかしお喋りに夢中で前が見えてませんでした。お怪我はありませんか?」
「ふざけんじゃねぇぞ、死ぬかと思ったわ!」
40歳くらいのおじさんが激怒していた。
「おい、お前の荒い運転からボスを守ろうとしたおかげで、体打っちまったじゃねぇか」
「あれ、そうですか?ぶつけたような感触はなかったんですけどね?」
(そういえば、轢きそうになったのは、悪いと思うけど、なんで道路の真ん中でこんな人数で陣取ってんだ?)
「お前にはこのあざが見えねぇのか?」
(んー、確かに見事に真っ青なあざだなぁ)
「お詫びといっては何ですが、100k渡しますので許してもらえませんか?」
100kも渡しておけばこの場は収まるだろうとボルドは考えていた。
「あん、兄ちゃん、人に怪我させておいてそりゃねぇだろ」
「100kじゃ足りないですか?」
「足りないねぇ、お前さんが今運んでるチョコレート全部差し出せば見逃してやるよ」
すると周りの男たちは剣の先を上げて、ボルドを威嚇し始めた。
そしてボルドはようやく気付く、何故こんなにも大所帯なのか、何故武装しているのか、なぜ道の真ん中にいたのか。
(あぁ、これが噂に聞く山賊か、初めて遭遇したよ)
「ボルドさん大丈夫・・・ってええもしかしてこの方達って」
カミーラはボルドがなかなか戻ってこないのを心配して出てきた。
「あぁ多分山賊だな。」
しかしボルドは別段臆する様子ではなかった。
「あぁ、予想どおり山賊だが、ただの山賊じゃあないぜ」
「狙った獲物は逃がさねぇ、ドラウグル団とは俺達のことよ」
「とっとと、お前らが積んでる王都から取り寄せられたチョコレート渡してもらおうか」
どこでボルド達の情報を知ったのかは分からないが、やはりこの荷物が狙いらしい。
「あの、ボルドさん大丈夫ですか、私もお手伝いしましょうか?」
「いや大丈夫、このくらいの敵、俺一人で十分だよ」
ボルドは背中の鞘に入っている柄に手をかけた
(形状は棒状にして、殺傷能力を抑えて、コーティングレベルは2ぐらいかな)
「差し出さねぇっていうんだったら、奪うまでよ、死ねやぁぁぁぁぁ!」
チョコレートを差し出さないボルドにイラついた山賊の一人が、遂に切りかかってきた。
しかし、その剣はボルドに届くことはなかった。
「ぐぁ」
「・・・・・え」
「お見事」
山賊の一人は後方まで吹っ飛ばされ、木にぶつかり、ノックダウンさせられていた。
仲間の一人がのびていることにも驚きだが、仲間を吹っ飛ばした武器の形状にも山賊たちは驚いていた。
「なんだよ、その棒・・・」
スティック状のクッキーの一部にチョコレートがコーティングされたものが山賊たちの目の前に君臨していた。
「ふ、ふざけんじゃねぞ、そんなふざけた武器に俺らが負けてたまるかぁぁぁ」
その言葉に駆り立てられ山賊たちは一斉にボルドに襲い掛かる。
しかし、ボルドは焦ることなく
「いやー、山賊やってて、時代に取り残されてたかもしんないけどさ、今はこういう武器が流行りなんだよね、ふんっ」
襲い掛かってきた山賊全員を薙ぎ払った。
そして残ったのは山賊のボスだけだった。
「さて、あんただけになったけど、見逃したらまた悪さしそうだよね」
「しない、しない、山賊なんかやめて、おとなしくチョコレート食べてますから、許しt」
「お前みたいな甘ちゃんがチョコレートなんて食ってたら、ますます甘ちゃんになるだろうが!」
ボスの頭を叩き気絶させた
「いや、さすがの剣?棒?捌きといったところでしょうか?」
パチパチとカミーラが拍手を送る。
「この武器は剣にも、棒にもなるからな、なんて形容したらいいか分かんねぇな」
ボルドが扱うCW-5は王都で最近作られたチョコレート兵器のうちの一つである。
「おーーい、話合い終わった?早くしないと荷物食べちゃうぞってええええ、なにしちゃっつてんのさ」
車で待っているのが飽きたのかマーブルが出てきたが、目の前の惨状に驚いた。
「うるせー、こっちの気も知らないで、ってお前こそ、なにまた食ってんだよ!」
ボルドの方は食べちゃうぞと言ってる割にもう食べてるマーブルに驚いた。
「いや、お腹すいたから・・・」
「ふっっざっっんな!!!!」
怒号が雪が吹き荒れる森の中に響いた。