初恋は思い出に
エドフォード様の治療をはじめて二週間。彼は散歩どころか、馬に乗れるほど回復していた。
どうなってるんだ、究極ポーション!?
その効果は目を瞠るばかりだった。
そして治療をきっかけに、私とエドフォード様の間には特別な感情が芽生えていた。
友情という名の美しき感情が……!
「私を救ってくれたリディアのためなら、ここが戦場になるたびに駆け付けよう」
「そうたびたび戦場になっては困りますので、もうここにあなた様が来ないことを祈ります」
帰還するエドフォード様の姿を見送ったとき、どうにか女神様のシナリオに応えられたという安堵と、「え、これでよかったんだろうか」という疑問が同時に生まれてしまったがもうどうしようもない。
とはいえ、命を救ったのだからまぁいいか。
最後のとき、黒騎士様との会話はたった一言だけ。
「世話になったな。元気で」
特に私たちの間に何があったわけじゃない。
顔も年齢もわからない相手に対して、ちょっとだけ恋心が芽生えていたなんて誰にも言わなくていい。
「黒騎士様もお元気で」
去って行く騎士たちを見送り、私は解放感から青空の下でおもいきり伸びをする。
「さ!これからどうしようかな~!」
王子様と恋には落ちなかったけれど、もうシナリオはさよならだ。
これからは、新しい人生を自分のために生きていきたい。
「強くて頼もしい騎士と結婚したいな~。よし、がんばろう!」
15歳の春。
ほのかに抱いた初恋に別れを告げ、意気揚々と歩きだす。
このときは、まさか自分が二度も政略結婚に失敗するとは露ほども思っていなかった。
もしも時を戻せるなら、私は過去の自分に言ってやりたい。
悪いことは言わないから、王子様を捕まえておけと……!