ロリコンではありませんが弟子はかわいいのです《お師様side》
前衛的熟女好きのティグラルドです。
あぁ、熟女好きには前衛と後衛という二つの派閥が存在しまして、前衛的な熟女好きは年相応の美しさというものを愛してやまない派閥です。いわゆる美魔女というのは対象外でして。後衛は、熟女だけれど若くきれいな女性を好む派閥です。
あまりご興味はないですか?リディアなんて「どっちでもいいです、仕事さえしてくれれば」と言ってあまり真剣に聞いてくれないんですよ。困った弟子です。
そういえば、そのリディアですよ。
私がちょっとメリダ・ヒース子爵夫人と旅行に行っている間に、あの黒騎士様を連れ込んでいました。どう見ても彼はリディアを好いているのですが、なぜかリディアは彼を遠ざけようとしています。
ナタリーが言っていました。
えぇ、私は部屋に篭ってお仕事をしていますから……。
ナタリーは用事があると遠慮なくズカズカ入ってきて、話したいだけ話して帰っていく元気なお嬢さんです。あの子はきっとお喋り好きな熟女になるでしょう。
「ちょっと小耳に挟んだんだけれどね?」と言って、国家機密を喋り出すような熟女になるに違いありません。
……何のお話でしたっけ。
そうそう。リディアとラウルです。
私は弟子の色事には関わらないと決めているので放置しようと思っていたのですが、たまたまリディアが早めに就寝した際に彼とリビングで出くわしまして。
事情を聞いてみると、彼はエドフォード殿下の選んだ見合い相手だったそうです。
カイアスさんとおっしゃる方が魔女の生け贄なんていうから、てっきり人体実験される生け贄だと思ってここに来たと彼は言っておりました。
なんとまぁ、人の話はしっかり聞いて、契約書に目を通さねばいけないというのに。
戦場では最強の敵なしだった黒騎士様も、どうやら色事には疎い上に会話能力があまりないようです。これは軍人ですから仕方ありませんね。
しかし彼は優しい人です。
『生け贄は勘違いで、婿になるために来たんだってリディアに伝えたらどうですか?』
私がそういうと
『自分の婿を生け贄だなんて表現されたと知ったら、リディアが傷つく。だからこれは黙っていて欲しい』
彼がそう思うならそういうことにしましょう。多分リディアは傷つきませんが。「カイアス爆ぜろ!」くらいは言うでしょうね、ただしそこに悲しみなんてないと思います。
『仕方ないですね。私からは何も言いません。リディアは呪われた武具でも装備しているかのように壊滅的に男運がないので、ラウルに幸せにしてもらえればと思います』
私が笑顔でそう伝えると、彼は少しだけ躊躇いつつ言いました。
『念のため問うが、師匠はリディアを女として見ていないのか?』
驚きです。
そんなことを聞かれるとは。私がリディアを女性として愛するなんて、異種族間恋愛か異次元恋愛をするくらいの不自然なことなのですから。
『おかしなことを聞きますね~。私は正統派の熟女好きでして、それはある意味で人種と表現してもいいでしょう。あの子は出会った当時12歳でしたし、今でも親子ほど年齢差があります。あぁ、伝わらないですか?確かに世の中にはそういう夫婦もおりますものね。けれどご安心を。私はロリコンではありません。けれど、弟子はかわいいのです。リディアが70代になったら恋に落ちるかもしれませんが、そのとき私は100を超えていますから、きっと冥府でさらなる熟女を追いかけているでしょう』
『……わかった。無駄な質問をしてすまない』
『あ、そうそう。一つ大事なことを言っておきます』
『なんだ』
『熟女の魅力は星の数ほどありますが、私が最近発見した魅力は、かつてはスレンダーだった女性が年々ふくよかになり、50代に差し掛かったときにふとした瞬間に生まれ出る「加齢えくぼ」です。たるみとハリのなさが生み出す熟女の神秘と申しますか、つぼみが花咲くようにある日突然現れるえくぼ。片方だけに出ているのもまたよし、両方に出るのもよし、いずれあなたにもこの良さがわかると思いますがこれは絶対的に知っておいた方がいい情報ですのでご留意くださいませ』
『いらん』
ラウルの目元が引き攣っていたのはなぜでしょう。
彼は21歳のリディアに惚れるなんていうロリコンですから、熟女の良さは伝わらなかったみたいですね。
こういうことは無理強いできませんから、そっとしておいてあげましょう。
どうか若い二人に、大いなる幸福が訪れることを願って。





