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スーパーポリスメン ダリー・ヘイル

 さっきからやたら雑音が酷い。


 人が話しているようにも聞こえるが……理解できん、頭が拒否ってる感じだ。


「おい、さっき連れられてきたあいつ一体どうなってんだ? ずっと蹲って微動だにしないぞ」


「ぶち込まれたショックで放心してるんじゃないのか?」


 ぶち込……一瞬何か思い出しそうになって、何故か尻の辺りがキュンとした。


「でっ、なんだこいつ急に体が跳ねた!?」


「お前何かしただろ」


「何もしてねぇって! ほら、ちょっと動きだした」


 魂が戻って来たみたいに意識がはっきりしていく。


 ここは……牢屋?


 まず、この下の穴の異物感はなんなんだ。


 後何故だか、ここまで来た経緯が思い出せない。


 ちょっと考えてみよう。


 そう、俺は確か全裸……大勢の人が俺を…… …… あ…… あ……。


「お……おお、ダメダメ!」


 魂が抜け出るような寒気を感じて、俺は両手で目の前をまさぐった。


「起きたと思ったら次は何してんだ…」


「やばいぞ、クスリか?」


「上の人に報告したほうがよくないかこれ。ちょっと行って……あ、看守長」


 部屋が少し明るくなって、看守が別の誰かに気づく。


「看守一同背筋を正せ! 例のお方がお見えになられたぞ!」


 牢屋の壁で見えないが、これは恐らく看守長の声だと思う。


 二人の看守は声に反応して立ち上がり、敬礼のポーズを取った。


 そして足音が始まる。



カン カン カン。



 少しずれて、牢屋の柵を棒で引きずるような音が鳴り響いた。


 その音はこちらにどんどん近づいてきてた様で。


 ガァァァン!! 突然目の前の柵を叩く音に、俺の体が思わず跳ねる。


「報告にあった男だな、此方を向け!!」


 甲高い声だ、女か? 特に興味も無いけど面倒だから顔を上げた。


 そしたら物凄いものを見てしまう。


 なんだこいつ、どんな勘違いしたらこうなるんだ。


 上からアメリカンポリスばりのギザギザ帽子に大門の眼鏡。


 青いビニール素材のミニスカ制服には、大きな星マークが特徴のでかくて短いネクタイと腰には手錠。


 膝から下もショートブーツと…なんだその紐、網タイツとも呼べないような紐がひし形を形作るように巻き付いていた。


 それで如何にもって感じで顎を上げて、手に握りしめた警棒で遊んでやがる。


 これで風船ガムでも膨らましてたら……あ、風船ガム膨らまし始めた!!



ポフッ



 小さい破裂音がして、ガムが顔に張り付いた。


「ぁ……へぅ……ひぇ……ぅ」


 勘違い女は張り付いたガムを舌で何とか剥がそうと難儀して諦め、最後は警棒を地面に置き手で取っていた。



 ◇     ◇     ◇ 



 そして一呼吸置くと女は突然、聞いてもいない自己紹介をする。


「わ、私はスーパーポリスメンのダリー・ヘイル」


「スーパー……は?」


 訳が分からん。


 ポリスメンより一つ格上とか? いやいやいや、こんなバカ丸出しの恰好でそれは絶対にない。


 こいつスゲーアホ、そう思ったら俺は思わず鼻で笑ってしまう。


「……ハッ」


「こいつは死刑だーーーーーー!」


「はぁ!?」


 女はそれに顔を真っ赤に沸騰させて、ガシガシと柵を揺さぶり叫びだした。


 見かねたのか、まあまあと横についていた看守長が一歩前に出てその場を仕切りだす。


「ダリー様、私にお任せを。君は此方に来てまだ日が浅くよくわかってないようだ……だから聞きなさい。スーパーポリスメンは……軽度の事件に対しての裁定権限をもった法の番人でもあらせられるのだよ」


 無礼があれば即死刑だ、となると私が面倒だから形だけでも謝った方がいいよと看守長は続けていった。


 何でちょっと無礼をはたらいただけで死刑なんだよ、前世紀もいいとこじゃねぇか。


 でも格好だけで笑ったのは悪かったかもしれない、素直に謝っとくか。


「……すんません、その服かっこいいですね」


「……」


 女の顔から圧が薄れていった。


 そして急に喜び始めた!


「見て看守長!! こんなトコにハイセンスな人がいる!! この人を無罪にするわ!!」


 看守長は引いていた。

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