昔ギリシャのイカロスは……
履いてるパンツをじっと凝視する。
詳細を見るとパンツには重さの項目があり、1となっていた。
「…神父さんに聞きたいんだけど、装備の重さって体力と関係ある?」
「あるねー、体力の最大値分の重さの装備ができるねー」
「数値以上に重い装備ってできるの?」
「出来るねー、でも溢れた重さの分だけ一歩毎にバイタルが減るよー。アルテリオス計算式だよねー」
「普通に引き算と言え」
やっぱりそうだ、俺の想像通り。
村人風の服をロストしたのも、多分俺に装備を維持する体力がないからだ。
きっと死んだ時、その場所におきっぱになってしまったんだろう。
「それにしたって訳わかんねぇよ……理不尽すぎだろ」
かくして俺に起こる事象はマッパ検証によって実証されることになった。
「あーもしかしてだけど、君パンツの重さでバイタルが減って死んだ可能性あるよねー」
「いや、100パーそれだよ」
「え、そうなの? んー僕って冴えてるよね。これも君のちん」
「あ、それ以上言わなくていいです」
ともかくこれで謎は解けた。
が、それによって新たな問題が浮き彫りに!
「くそっ、いやしかし……駄目だ、どうしても駄目だ!」
誠に遺憾ではあるが……。
……全裸だと、幼女が眺められない!
いや、正確には眺めることに関してのみなら可能ではある。
しかし保護者によるポリスメン召喚の儀は避けられない。
「どうする、どうするよ俺」
早くしないと体内の残り僅かな幼分(隠しステ)さえも使い切ってしまう。
……そうだ。
一歩ごとにバイタルが減るんなら、一歩で村の広場まで行けばいいじゃん!?
「俺は天才なのか……! あの神父さん、村の広場ってどの窓の方向?」
「広場ならそこの窓の方角だよ」
「サンキュー♪」
俺は力強く窓を開くと、思いっきり窓枠を蹴って飛び出した。
さあ、いざヴァルハラへ……。
……死んだ、記録3メートル。
「おお、五郎様よ。死んでしまうとは情けない」
「くそー、どれだけ飛べばいい…いやどこまでもだ!」
……また死んだ、記録変わらず。
「おお、五郎様よ。死んでしまうとは情けない」
「何が悪い?プランは完璧な筈だ」
……またまた死んだ、以下同文。
「おお、五郎様よ。死んでしまうとは情けない」
「ここから更に飛距離を伸ばす為にまずパンツの裾を各足に通します。これで足が二本あるから1パンツ+1パンツ。そしていつもの二倍のジャンプにいつもの三倍の回転を加え」
……そしてまた死んだ、諦めた。
「ィ゛エ゛イ゛メ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ン!」
「わあああああああああ!」
俺は床に突っ伏し、叫んだ。
「一応聞くけど、広場までジャンプで行こうとしてる? ここから1キロ弱あるよー」
「詰んだあああああああ!」
「何か急ぎ? でも歩き回るのに全裸にならないといけないんだよねー君さー」
「わかってるから、あえて口にしないで欲しい……」
「んー、お昼はみんな活動してるよね。真夜中過ぎたあたりなら皆寝てるし大丈夫だとおもうけどー」
「それだ!」
俺の耳に突然これ以上ないというほどのナイスアイディアが飛び込んできて、すぐさま飛び起きた。
「最高だ神父さん! 頼む今すぐオフトゥンを! 一生のお願い!」
「オフトゥ~……布団? ベッドなら宿の無い方の為に簡易宿泊用のがあるよね、奥の扉に」
「ありがとうございます!」
俺は膝に頭が付くまでお辞儀をし、扉の中に入るとすぐベッドに潜り込む。
このまま14時間も寝れば夜中の2時、そのぐらいの時間になれば誰もいないだろうさ!
よしいける! いけるぞこれ! なんかワクワクしてきた。
やばい……寝れない。
なんだろ、ワクワクというか胸がザワザワする。
「あのー……一緒に寝てもいい?」
ぼそりと神父の声がして目を開けると、開いた扉の隙間から神父がこちらを覗いていた。
「……え?」
全身を駆け巡る悪寒で体が飛び起きた。
俺はすぐ扉に鍵を掛けようと、思い切り扉を押す。
しかしそれで閉まると思った扉は、神父が差し込んできた左足によって妨害を受けた。
そこから扉を挟んで開いたり閉まったりの押し合いに発展。
俺の操を掛けた激しい攻防戦が始まった!!
「俺と一緒に寝て一体何するつもりだ!」
「ナニもしないよ、ただちょっとだけ!」
「ナニの言い方が怖いんだよ! ちょっとって何なんだ!」
「ちょっとはちょっとだよ! ちょっとだけだよー!」
「訳わかんねぇよ!!」
「わかるよっ……きっと後で全部わかるっ!」
「俺とは別で寝てくれ頼むからっ!!!」
「争いって……空しいよねっ……皆が少しずつ譲る努力をすれば!」
「何で急に世界規模の話になるんだよ! そんなんで絆されるかっ!!」
この攻防戦は後に約十分ほど続き、俺の防衛成功により幕を閉じた。
今日は駄目みたいだからまた誘うね、と言い残し神父は去った。